本もぐもぐ2018/06〜07

最近読んだものについて。

・小説

かがみの孤城

かがみの孤城

かがみの孤城

 

図書館で9ヶ月ほど予約待ちをして久々に辻村さんを読む。辻村さんは感情ホラー作家(水城せとな的な意味で)だと思っていたのだけど、人の痛みや傷に寄り添うとても優しい小説だった。テーマ的にも児童文学寄りなのかな。でも人と人が決定的に分かり合えない絶望の描き方はやっぱりうまい。
一番のオチには割と早めに気付いてしまったけど、オオカミ様の正体がわかった時にはじんわりきた。子どもたちの未来は意図的に描かれていないけど、きっと未来は明るいし、どこかで交差できるだろうと信じたくなる。一番過酷な目に遭っているアキの未来の姿があれだというのも、とても良いなあ。世の中に溶け込めないと思っている子どもたちにぜひ読んでほしい小説だな、と思ったので本屋大賞は納得。

コンビニ人間

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

こちらもかなり前に図書館で予約を入れていたのが回ってきたので読む。さくさく読みやすい小説だった。芥川賞を受賞した時に「衝撃の」とか「問題作」とか言われていたのでどんな話かと身構えていたけど。なるほどサイコパスってこういう思考回路なのかもなあ、というのが感想です。ふつう。

鍵のない夢を見る

鍵のない夢を見る (文春文庫)

鍵のない夢を見る (文春文庫)

 

かがみの孤城で久しぶりに辻村さんを読んだら面白かったので、自分の中で辻村作品祭りに入った。こっちは直木賞受賞作らしい。日常に潜む犯罪がテーマな短編集で、最後にすとーんと落としてくるオチのつけ方が割といつも同じなんだけど、毎回ぞわっとしてくせになる。「芹葉大学の夢と殺人」の口だけ達者でふわふわ夢見てるダメ男(医学部に入り直して医者になってからプロのサッカー選手になりたいとか本気で言ってる大学生)は実写ドラマで林遣都が演じていたと聞いて俄然見たくなった。「君本家の誘拐」は色々な実際の事件を想起しながら、一番他人事ではない気持ちで読んだ。

盲目的な恋と友情

盲目的な恋と友情 (新潮文庫)

盲目的な恋と友情 (新潮文庫)

 

辻村さん祭り3作目。やっぱりこういう作品が私の中の辻村さんイメージだな。かがみの孤城の健全さはなんだったのか…。
盲目的という言葉は恋と友情、どちらにもかかっている。友情の方で描かれる女→女への執着エピソードや感情については結構身に覚えがあるし、学生時代を思い返してどきっとする女性は多いのでは。しかし辻村さんが描くダメな男って本当にどうしようもなくダメだよな…そして女性の嫌な部分のレパートリーが多い。嫌な女性を描くのが上手い女性作家はたくさんいるけど、そこまでウッとならないので好き。
主人公の母(元タカラジェンヌ)についての描写で、「一定の年齢以上で美を保っている人たちは初対面でもお互いに以前どこかで知り合いだったかしら、みたいな雰囲気を出して挨拶する」といった表現があってすごくわかる!!と思ったりした。美しい年配女性たちを見ているとそんな感じがする。
ヒグチユウコさんの表紙も妖しくグロ可愛くて、世界観に合っていて素敵。

・ルポタージュ

狂うひと

狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ

狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ

 

三宅ちゃんの書評で気になって「死の棘」を読み、その後こちらのルポの存在を知って読んだ。死の棘の中で圧倒的な存在感を持って描かれていた妻・ミホへのインタビューと周囲への聞き取り、資料調査などから二人の出会いから死ぬまでの経過を詳しくまとめているのだけど、これはもう、セットの副読本にしてもいいのでは。これを読む前と後で「死の棘」の受け取り方がガラッと変わるのでは…とすら思う。「死の棘」自体がノンフィクションの私小説であるはずなのに、印象操作がすごい。「メンヘラ妻の浮気断罪日記」だと思っていたら「何もネタが無い書き手が自らをコンテンツにするために自分の身の回りの人間の精神を壊していく日記」になっている…。
ご本人たちにとっては戦後のドラマチックな人生を作るための発狂と贖罪、さらにそれが文壇にも認められているのだから非常にお似合いのカップルですねという感じだけど、利用された愛人や巻き込まれた家族はお気の毒でしかない。実在の人間をコンテンツにして書くことの業の深さを考えさせられた。

約束された場所で

約束された場所で―underground 2 (文春文庫)

約束された場所で―underground 2 (文春文庫)

オウム真理教事件の死刑囚たちの死刑が執行されたタイミングで世間にオウムの話題が溢れていて、私は全然オウムのことを知らないんだなと気付いた。関連ニュースまとめなんかを読み漁り、その関連事件の多さや当時のメディアの取り上げ方なんかを初めて知って衝撃を受け、村上春樹のインタビュー集に辿り着いた。
地下鉄サリン事件被害者のインタビュー集1作目「アンダーグラウンド」は読み始めたものの途中で挫折してしまったのでここには書かない。「約束された場所で」は元(もしくは現役)オウム信者へのインタビュー集で、私にはこちらの方が興味深かった。犯罪心理学的な分析はそんなになくて、ひたすら信者の生い立ちやなぜオウムに入ったのか、みたいなインタビューが続く。私は専門家ではないのでカテゴライズはできないし考察みたいなものは村上春樹が全て書いているんだけど、基本的にみなさん真面目で頭で考えすぎる傾向があり、世の中の矛盾を無視できず思い込みがちょっと激しい、でも日々すれ違っていそうな、普通の人たちの記録だった。自分がいつそちら側に転んでしまうか、誰にもわからない。
オウムのやっていたことも教義もめちゃくちゃだし冷静になればおかしいとわかるはずなのだけど、それでもあれに出会ったから生きていられた人が一定数いるのだ。そしてそういうセーフティネットを必要としている人は現代にもたくさんいる、というのは重く捉えなければならないことだと思う。
「優れた宗教は自分達の中に悪を置いておく。自分達だけ純粋な正義でいようとすると、外に悪を置かないとバランスが取れなくなってくる」という言葉が印象的だった。宗教に限らず、悪を内包し認めることって大事なんだろうな。

・漫画

きのう何食べた?

きのう何食べた?(14) (モーニング KC)

きのう何食べた?(14) (モーニング KC)

 

もう14巻!大奥と交互に出ているのだから当然なのに、作中で佳代子さんの孫が小学生になっていて、こんなに時間が経っていたの?とびっくりする。そりゃあシロさんもすっかり丸くなるわけです。
妊活を迷う志乃さんの回は、最近の世の中のあれこれも相まって全てのセリフがぐっときた。「子どもができたらうれしいだろうけどずっと二人でも幸せなの どっちでもいいの」と言うコマの後に、これからずっと二人で生きていくだろうシロさんとケンジの何気ない生活の一コマをすっと挟んでくるのが、よしながふみ〜!!!って感じで秀逸。子どもができたって別に無理に店を継がせるつもりはない、と言い切る志乃さんはきっといい親になると思う。
今回も食べたいレシピ、作りたいレシピが目白押しで料理欲と食欲を大いに刺激されました。