雪組ファントムが大傑作でした

あまりのチケ難で完全に諦めていた雪組ファントム、奇跡のご縁によって観劇できました。

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今の雪組トップコンビはお歌が激うまだし、名曲を歌いこなしてくれるだろうな、クオリティ高い舞台になるんだろうな〜と期待していたけど、もうそんな次元の出来ではなかった。なんていうか、これ、私の知ってる「ファントム」と本当に同じ作品??と思うくらい、全く新しい傑作を生み出してました雪組。すごい。サヨナラ公演でもない宝塚の舞台を観てこんなに泣いたのは初めて。しかも再演で脚本も曲も全て知ってる作品なのに。びっくりするくらい良かった。本当にこの値段で観ていいんですか?って感じ。正直、宝塚以外をひっくるめてもここ数年で観た舞台の中でかなり上位の観劇体験でした。

そもそも宝塚のファントム自体は初演から全て観ていて、特に初演は一番追いかけていた時代の宙組だったので、新公とかも含めてかなり回数を観てました。これまでのファントムも歌唱力の高い方が演じてこられているし、作品的にもそういうトップさんの組を選んで上演しているのかなと思う。ただ私の中では「曲は好き、衣装やセットも好き。でも脚本はそんなに。。」という位置付けで、ロイドウェバー版のオペラ座の怪人と比べるとストーリーが陳腐というか(たぶん作品の一番の肝である暗さやおぞましさの部分を宝塚らしくキラキラに仕上げてしまっているから)、いまいち誰にも感情移入できない作品だなあ、と思ってたんですね。でも今回はこれまでのこの作品に対する違和感みたいなものが全て綺麗に消えて、脚本変わったんじゃないの?と思うくらい別の見え方が出てきて、やっとこの作品本来の良さが理解できたような気がする。そしてそれはトップコンビ望海風斗さん、真彩希帆さんの歌唱力だけではない役の解釈と表現力が成し遂げていると言って過言ではないと思う。本当に素晴らしかった。今の雪組にこの作品を上演させてくれてありがとう…。

まずこれまでと大きく違うのはファントム=エリックの役作りだと思う。これまでのファントムは「あまりの醜さからオペラ座の地下で隠れ暮らしている」という設定でありながら、圧倒的に美しいし(これはだいもんのエリックもそうなんだけど。美しすぎ。)従者もいるし(あんな美しい浮浪者いないだろ)オペラ座やキャリエールに対する態度も威圧的なので、「地下の王様」という感じだった。抑圧された育ちをしているから我儘な王様気質になっていて、だから一方的に見初めたクリスティーヌを攫ってきたり、オペラ座を自分の好きなように動かしたい気持ちが強いんだな、と思ってた。母親絡みの話が出てきて少し弱さが見えるけど、基本的には誇り高くて音楽の才能もあるカリスマというイメージ。
でもだいもんのエリックは、本当に純粋な子どもで、キャリエールに対して「オペラ座を出て行ったらじゃあ僕はどこへ行ったらいいんだ」と詰め寄っている時も怒っているというより保護を求めている感じで、初っ端から母性本能に訴えてくる。もうめちゃくちゃかわいい。クリスティーヌへの恋も、自分を丸ごと受け入れ愛してくれた母と同じ愛し方で真っ直ぐで、「自分のものにしたい」というより「守りたい、大事にしたい、成功を応援したい」という気持ちが伝わってきて、じ、純愛〜!!!クリスティーヌの契約後にお祝いの花束を持って駆けつけるのも、振られたと思って凹むのも全部可愛い。そしてその行動に身勝手さが無いんだよなあ。恋愛経験が皆無故の突っ走りがち、コミュ力不足な感じはあるけど、「お前は俺のもの」感が本当にない。これはファントムとして斬新で、とてもいい解釈だと思う。地下にクリスティーヌを攫ったのも完全に彼女を守るためだし、拒絶された後も「僕が驚かせてしまったのがいけないんだ」と彼女を悪く言わない!怒ってもいいところなのに!天使!!ここ、同じ脚本だよね?と思うくらいこれまでと感じ方が違った。そしてだいもんエリックがあまりに純粋に真っ直ぐ慈しむような愛を注いでいるから、顔も名前も知らないクリスティーヌが自然とエリックを慕うことにも納得感がある。
後半、震え泣きながらクリスティーヌの愛を求め、キャリエールと和解し、殺して欲しいと言うまでの流れはもうずっと号泣。エリックの全ての台詞に泣く。エリックってこんなに可哀想な人だったんだ…。

そしてきいちゃんのクリスティーヌも負けないくらい素晴らしかった。これまでクリスティーヌに対しては結構モヤモヤしていて。フィリップが好きなの?じゃあ地下に降りてエリックに愛してるとか言うのはなんなの?恋愛的な愛ではないやつなの?可哀想な話を聞いたから同情したの?そんで「自分で顔見たいって言いながら見たら逃げて、勝手な女だな…」と思ってたんですが。きいちゃんのクリスティーヌはなんか、全ての言動に答えがありましたね。
まず1幕の段階で、あ、この子エリックに恋もしくは絶対的な愛情を持っている、とわかる。特に顔を合わせずに歌うビストロの場面とか、「離れていても先生に見守られていることを思い出して生き生きと輝き出す(そして脳内では先生と美しいデュエットを歌っている)」という表現がすごい。契約後ふわふわしているのは歌が認められた喜びからだし、口説いてくるフィリップに対しても「今は混乱していてわからない」とちゃんと返しているし(ここも、前からこんな脚本だったっけ!?浮かれたクリスティーヌとフィリップのラブシーンくらいに思ってたよ)何なら彼女は今一番先生に会って喜びを伝えたいんじゃないかな、とさえ思えてくる。
「私の真の愛」では聖女性が爆発していて、その包容力に号泣。この場面で泣いたの初めて。そりゃエリックも顔見せちゃうよ…。クリスティーヌは本当にエリックに(母性的な意味でも)愛を感じていて、母親と同じように彼の全てを受け入れたいと思って訴えた、でも実際に見ると驚いて逃げてしまう。そうだよね、覚悟していたつもりでも咄嗟に対応できなかったりするよね。そして彼に謝らなければ!という後悔までがすごく自然。全然勝手な女に見えない。

ロイドウェバー版はクリスティーヌがファントムに父親を重ねていて、コピット版はファントムがクリスティーヌに母親を重ねている。わかっていたのに、これまでの宝塚版はなんとなくクリスティーヌが師としてのファントムを父親のように慕っている、ように見えたと思う。それはトップコンビの関係性に依るものもあると思うけど、何も知らないクリスティーヌを年上のエリックが導く…という構図の印象がかなり強かった。でも今回は、エリックって実はクリスティーヌとそんなに年齢変わらないのかな?と思うくらい、エリックに年上感を感じないし、きいちゃんクリスティーヌの母性がすごい。ラストのピアノを弾きながらエリックの深い愛を思い返す、という演出も初めてすっと入ってきたなあ。(これまでは宝塚特有の、死んだら精神は一緒にいる…みたいな抽象的な場面に思っていた)クリスティーヌの成長と内面の深さが滲み出ていた…。

で、ここまで書いて思ったけど、歌唱力が高ければいいというものではないけど、やはりそういう「説得力」に大きな力を与えているのは歌の力なんだよね。きいちゃんが本当に歌がめちゃくちゃ上手いから、エリックが天使の歌声を聴いて惚れる、というのが納得できるし、だいもんがそれを指導できるくらい歌が上手いのでレッスンの話も「顔さえマシだったらオペラ歌手になれた」とかもすんなり入ってくるし、二人のデュエットが美しすぎるから、特に恋の話をしていなくてもあーこの二人恋に落ちてますね、となんか納得しちゃう。つまり曲が、音に綺麗に気持ちを乗せて歌えばそう伝わるように作られてるんだなあ、と今回初めてわかりましたね。Homeとかビストロとかでも泣いてしまったのは完全にお二人の生み出す響きの美しさにやられたからだけど…。ミュージカルにおいて歌の担う役割ってやっぱり大きいんだなって。

そして二人に引っ張られて雪組全体のレベルもすごく上がっている!!アンサンブルが美しい。それぞれの役も演じる方に合わせてかなりイメージが違ってそれも面白かったな。彩風さんのキャリエールは歌い出しの「エリック…」でもう泣かされた。キャリエールって本当に全ての元凶のクソ男なんだけど、18歳だったし仕方ないのかな、、とか、だいもんエリックがあまりにも良い青年だから、「キャリエールの育て方が良かったんだね泣」みたいな気持ちになってしまう…。

私が観たのはAキャスト版だったのだけど、フィリップの彩凪さんがめちゃくちゃチャラくて衝撃だった。これまで宝塚のフィリップ=ウェバー版のラウルっぽくて、強引に迫るファントムからクリスティーヌを守る白馬の王子さまのようなポジションで、誠実ないい人っぽさが強調されていた気がするんですが(初演の安蘭けいさんのイメージも強い)彩凪さんフィリップはプレイボーイ感が炸裂していて、でも不誠実なわけではなく、「この人にとっては毎回毎回の恋が運命で本気なんだろうな〜(笑)」と感じさせる、悪気のないチャラさが自然で。なのでクリスティーヌのことを素敵だ素敵だと言って、ラストでも命をかけて助けに行こうともするけど、それは騎士道精神みたいなもので、クリスティーヌへの愛という意味ではエリックの圧倒的勝利なんだよね。だからクリスティーヌがエリックの方に惹かれるのも当然だな…と、全てがスッキリ。

カルロッタも大御所が演じて、お局さまとしてクリスティーヌをいじめてるイメージだったけど、舞咲りんさんはきゃぴきゃぴしたカルロッタで可愛かったなー。アランも尻に敷かれているというより自発的に振り回されている感じがして微笑ましい。こういうのもアリなんだな〜と楽しかったです。雪組の生徒さん、全然知らないので気になるな…。

ショーの構成も良かった!特に群舞が!!!階段降りてくるところがかっこよすぎて声出そうになった!!!イケイケオーラを出して踊るだいもん〜〜好き〜!!そして銀橋渡りながら歌い継ぐ中詰があることにもびっくり。レビューを見ているみたいで贅沢。そしてそしてデュエダンが!!サヨナラ以外のデュエダンで泣いたの初めてだよ…あの場面だけはエリックとクリスティーヌに戻っているように見えて。最後に嬉しそうに抱きしめ合う二人が(一度離れてまた抱きしめ直すきいちゃんが!)見ていて幸福すぎて「こんな未来がifが見たい…来世でこうなっていてくれ…」と涙が止まらなくなりました。

あー、とにかく良かった。こんなに良いと思っていなかった。あと100回くらい観たいけどライビュすらチケット取れない。ブルーレイ発売を待ちます。