再演される限り見続けたいと願っている愛する演目、ダディロングレッグズ。今年は10周年という記念イヤーにして真綾さんの産休による新ジルーシャの誕生というサプライズもあり、いかなる手段を使っても全く入手できないチケットにやさぐれていたところ千秋楽の配信があり画面越しにですが見ることができました。ありがとうありがとう。アーカイブも残してくれてありがとう。そのまま円盤にしてくれてもいいんですよ。いや本当に2人芝居でカメラ10台(!)カメラワークもかなり拘っていてそのまま円盤にできそうな映像だったし…。
今回はやはり新ジルーシャ上白石萌音ちゃんの存在が大きく、彼女の登場によって作品全体に変化があったし、改めて真綾ジルーシャや芳雄ダディの特徴を感じることもできた。ちなみに私、「舞妓はレディ」からの萌音ちゃんファンです。歌もお芝居も大好き。代役が発表された時から「萌音ちゃんなら問題ない」とみんなが思ったであろう…。私も思いました。そして同時に「ちょっとイメージ通り過ぎて面白くないな」と思ってしまった。すみません。井上芳雄×上白石萌音×ジョン・ケアード、良く言えば安定、正直いうと既視感が…。しかもダディより前にジェーン・エアの上演が発表されていたので、トーンの違いがあるとはいえかなり境遇の似たキャラクター設定の作品を同じメンバーでやるの…?大丈夫?という気持ちが。もちろん楽しみではあったんだけど。
配信を見てみて、萌音ちゃんジルーシャは想像していた以上に可愛くて、台詞回しも歌も完璧で、稽古期間が短かったとは思えない仕上がりに「本当にこの作品を好きでいてくれたんだなぁ、萌音ちゃんが演じてくれてよかったなぁ」と思いました。いや〜可愛い。そして圧倒的な菩薩力。包容力と癒しのパワーがすごい。
ジルーシャの役作りとしては、真綾さんは文学の世界からそのまま飛び出してきた聡明なヒロインだと常々感じているのだけど、萌音ちゃんは花とゆめの少女漫画ヒロインみたい…と感じた。ダディ以外にも癖の強い美男子4人くらい手懐けてそう!萌音ちゃん本人の持つ資質、ご性格(パブリックイメージ)があまりにもハマっているというか、努力家で謙虚で人当たりが良くて、周りが助けたくなってしまう女の子。なので時々、こんなことは言わなさそうだな(「男の人は毛並み通り撫でてやるとゴロゴロ喉を鳴らす」とか「死んだ方がマシ」とか、ペンドルトン家への意地悪な視点とか)と感じる時があった。真綾さんはそれが彼女の生来のウィットだと感じたのだけど、萌音ちゃんの場合は本来はそんなことを言わない良い子なのに孤児院育ちで捻くれちゃってるのかなーというか。意地悪言葉が似合わない(笑)
元が純朴そうに見える分、特に2幕のめきめき成長して花開いていく様子が見事だった。そりゃあダディも誇らしくなるでしょう、手放したくなくなるでしょう。そして萌音ジルーシャは本来ひとりより人に囲まれているのが似合う女の子なのだろうな、と感じたので(真綾さんは孤独が似合うジルーシャだと思う)大学4年間で人間的な成長を経た後に愛を注ぐ相手を見つける、という物語はすんなり納得できた。
同い年の芳雄真綾ペアは「親友」「好敵手」という言葉がしっくりくる感じで、ダディはかなり若い(年齢差5歳以内くらい?)の実業家なんだろうと解釈してたけど、芳雄萌音ペアは10歳以上はありそうかな〜と思いながら見ていた。(原作でもはっきりとした年齢は明記されていなかったと思うけど。)ダディがしっかり「おじさま」で、見た目やテンションは若いけどジャーヴィスとして会っている時もやはり人生の先輩という感じがした。ジルーシャからジャーヴィスへの気持ちには根底に尊敬があり、「ジミーはまだ子どもだもの」という台詞も理解できる。原作の2人の関係性はまさにこういう雰囲気なんだろうなーと思う。
真綾ジルーシャには孤高の狼のようなところがあって、社交界の群れに馴染めないジャーヴィスとは似た者同士で惹かれあっているように見えた(そういうところも英文学っぽい)けど、今回は本当に計画外に萌音ジルーシャの菩薩力に吸い寄せられて細胞ごと生まれ変わってしまったジャーヴィス、に見えたな。少女漫画!ということで随所で芳雄ジャーヴィスの反応の少女漫画度が上がっている気がした。特にラスト、ずっとべそべそしているとこ、「どうしてジミーと結婚するなんて思えるの」と言われて反省しなきゃいけないのに嬉しさが滲み出てニヤついてしまっているとこ、跪いたらジルーシャも膝をついてきて「えっ」とちょっと怯んでるとこ、「これで許してあげる」と言われて泣きながら笑ってるとこ、全部かーーわいいなーー坊ちゃん!
今回大きく感じ方が変わったのは2幕後半、「チャリティー」でジャーヴィスが明確に失恋している…!と感じたこと。これまでは2人の関係の後悔を語っていると思っていた曲が「ジルーシャを諦めて、前を向いていく曲」になっていると感じた。涙を流しながらもラストは笑顔で清々しい。チャリティーによってその前の卒業式はジャーヴィスの思いの区切りに見えたし、そこからの小切手の手紙、プロポーズという流れも「与える側と受け取る側という線を自覚して身を引いたけど、ジルーシャがそこを踏み越えてきてくれたから自分も改めて踏み出せた」という流れでしっくり感じた。この演出?演技?の変化は今回とても好き!!
ということで全体的に今年もとても良かったダディロングレッグズでしたが、「せっかくの萌音ジルーシャ、もっと長い準備期間を設けて新しいダディとペアで見たかったな」とは思ってしまった。芳雄ダディも今回もとても良くて、このペアになったからこその演技の変化で好きな部分もたくさんあったんだけど、どうしても耳が真綾さんとの奇跡のデュエットを思い出してしまう…みたいなところがあって申し訳なくなり。あと年齢差が大きくなった分、嫉妬モードのダディに対して「援助対象にその大人げない振る舞いはどうなのよ」と思ってしまって(笑)私は芳雄真綾や韓国版のような年齢近めの2人が好きなのかも…。いや、本当にお二人には何の落ち度もなく、萌音ちゃんには心から引き受けてくれてありがとう!!代役と言わずこれからずっとジルーシャ演じて!!と思っているんだけど、できればペア固定がいいなぁという個人的な希望です。あと次は絶対また劇場で観たい。。
過去のダディ感想ブログ
ダディは頻繁に脚本や細かな演出が変わるので「これいつからの変更点だっけ?!前はどう感じたんだっけ?」と混乱するので自分用のメモを残してます。初回から書いておけば良かったよーー。
ダディの原作気になる方におすすめし続ける漫画
#ダディロングレッグズ 配信で原作が気になった方、勝田文先生のこちらの漫画もとても可愛くてめちゃくちゃおすすめです☺️昭和初期パロディなんだけど原作の設定や台詞が上手くハマってるんだよね〜〜https://t.co/9wbkeom9IM
— 桜花 (@oukakreuz) 2022年9月7日