男役の美学 グレート・ギャツビー

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月組「グレート・ギャツビー」観劇したので感想。

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私は2017年の日生劇場版グレート・ギャツビーを観劇した時に脚本と演出に怒りまくっていたのですが、今回はほぼ同じ脚本にもかかわらず「月組大好き!れいこさん素敵!!」となったので我ながら宝塚に求めているものがわかりやすいな…と思います。

(当時の怒りまくっていた感想↓)

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というのも、小池修一郎演出の「グレート・ギャツビー」に詰まっているのは「男の美学」ではなく「究極の男役の美学」だとしみじみ実感したから。

生身の男性が「思い込みが激しく一途」な演技をすると、紳士然とした態度に矛盾が生じるというか、危なさがある。(私はそういう男性にはどこかモラハラの気を感じてしまう。)実際に原作のギャツビーは過去を暴かれた際に激昂してしまうわけですよね。でも男役のギャツビーはファンタジーなので、何があっても揺らがない。月城さんのギャツビーは誠実そのもので、デイジーの全てを受け入れるし、本当にデイジーが産んだパメラのことまで愛してくれそうに見えた。

日生版でイライラした、美化されすぎているデイジーもなぜか引き裂かれた純愛物語になっているストーリーも脇役に焦点を当てすぎた脚本も宝塚になるとあら不思議、全部すんなり受け入れられる!自然!これが宝塚の世界!小説「華麗なるギャツビー」を好きな人に勧めたいかというと結構別物なのでどうかなという感じですが、「宝塚版ギャツビー」としては非常に良くできていると思う。幅広く下級生にまで見せ場が用意されていたし。個人的には今の月組生は芝居上手なので2幕物にせずコンパクトにまとめてしまっても良かったのでは、と思うけど。

いや〜本当にね〜〜今の月組めちゃくちゃ良いですね。大好き。人材が豊富だわあ〜と惚れ惚れしながら見ていました。ロマンス劇場で完全に好き!!となってから月組の映像を見まくっているのでより愛が深まっている。

ジェイ・ギャツビー/月城かなと

やっぱりこの作品はギャツビーが圧倒的に魅力的に見えないと成立しない。だってもう結婚してる元カノの家が見える位置に家を建てて夜な夜な眺めてるとか、居間に写真飾ってるとか、れいこさんが演じていてすらやばいなこいつ…となるからね。しかしその気持ちわるさを上回り「ひたすらに一途な男」に見せる包容力、誠実さ、アウトローの危うさと色気…説得力が完璧でした。

れいこさんは美しいんだけどそれ以上に演技力がすごい。コミカルな役や正統派王子も似合うけど、こんな影のある大人の男性もできるのかと…くうう好き…。なんせギャツビーって男役の集大成みたいな役なので、これを完璧に演じてもう思い残すことがない、と思われてしまったらどうしようと心配になりました。サヨナラ公演のような完成度と気迫だったから…。

黙って背中や横顔で語るのが上手すぎる。何度もリプライズされる名曲「朝日が昇る前に」も毎回表情や声色が違って心境の変化が感じられるし、裏社会の時の顔もデイジーの前の顔も、少年時代から続く努力し続けてきた1人の人間なんだとしっかりわかる役作り。お歌もこんなに上手かったっけ?と驚いた。

そしてやっぱり立ち姿がどの瞬間も美しい。アイスキャッスルの肩掛けコート最高に好きだわー。シャツの場面はやっぱりいきなりやるの意味不明だよ!と思いつつ(宝塚の衣装はデフォで豪華なので「こんなに美しいシャツ見たことない」みたいなテンションで出されても客席はポカーンだよ!あと階段にタンス置いてるの謎だよ!)がんがん投げるれいこさんが楽しそうでだんだん釘付けになっていました。あと問題の事後シーンよ!!これは見ていいのか?と思いながら全ての所作から溢れ出る色気。そして撃たれて倒れるところ美しすぎない?あんな美しく倒れる人いる??苦しそうなのに愛に満ちた表情で口が「デイジー」と動いているのとても良かったので映像で見るのが楽しみです。オタク早口で語ってしまった。あー好き。

トム・ブキャナン/鳳月 杏

ちなつさんのトムがまた良かった。トムって成金の嫌な奴というイメージが強かったのだけど、ちなつさんはあくまでも「アメリカの貴族」に徹していて爽やかだった。これも男役ならではの解釈ですね。重い愛人への態度も踊り子と写真撮られた時の対応も、上流階級の人間の余裕が見えて上品。王子様のような理想の夫ではないものの経済力以外の面でもデイジーを幸せにできる男であるというのが伝わってくるからこそ、ギャツビーがどれだけ努力しても敵わない相手なのだとわかる。ギャツビーが喉から手が出るくらい欲しかった上流階級とデイジー、どちらもさらっと手に入れている男なんだよなあ。

ニック・キャラウェイ/風間 柚乃

今回もやっぱり芝居が上手いおだちん!!ニックって強烈な個性はないけど主要キャラクターそれぞれと濃く絡んで相手の人間性を引き出さないといけないし、どの場面でも誰からも一定の好感度を持たせて印象を残す芝居をするってなかなか難しいと思う。ジョーダンとの初々しい恋も、葬儀場での重みある演技も良かったなあ。

とにかく1-3番手がこんなにしっかり芝居ができるって素晴らしい〜〜。それぞれ役者としてキャラが立っているしビジュアルの方向性もバランスが良くて最高に好きだ月組…しばらく組替えが無いことを祈る…。

パーティで3番手までのカップルが踊る場面、それぞれの関係性が出ている振付で良かったしレビューのようなシーンを入れてくれて嬉しかったな。(これを外部でやられると謎のダンスシーンに逃げるな!と思ってしまうのですが…)

デイジー・ブキャナン/海乃 美月

くらげちゃんのデイジーは大人っぽい顔立ちとアンニュイな雰囲気でれいこさんととってもお似合い。滲み出る人妻感。序盤から人生諦めてますモードが出ているのでギャツビーとの未来も一瞬夢見そうになるけど「やっぱり無理よね」に戻っていくのが自然だった。(あそこはデイジーがとても身勝手な女に見えるところでもあるので)墓場に薔薇を投げ入れるときの哀愁漂う表情が良かったな。

演技はさすがと思いつつ、ロマンス劇場の時はそんなに感じなかったお歌の不安定さが気になったなー。れいこさんが想像以上に良かったというのもありますが。

印象的だったのはジョーダン役の彩みちるさん。これぞジョーダン!という役作りで素敵だった。ロマンス劇場の社長令嬢からの変身ぶり、役者さんだなぁ。あと輝月ゆうまさんのマイヤーがイケおじすぎた。さすがです。裏社会メンバーの群舞すきだ!!

子役や幕開きの歌手など要所要所で良い演技を見せてくれる彩海せらさん、見せ場がどれも良かった。新公主演おめでとうございます。望海さんの新公やってた頃を見ているので私が月組にハマったタイミングで月に来てくれて勝手に親しみを感じている(笑)

本当に今の月組が好みなのでなるだけ見たいな…時間があればスカステで見た作品たちの感想も書きたいのですが…!

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