映画版インザハイツを見た。あ〜〜こういうミュージカル映画を観たかった!!!と叫びたいくらい良かった!個人的には舞台→映画化ミュージカル作品の中でも上位に好き。
底抜けに明るいラテンな音楽と圧倒的なダンス、ラップに乗せた皮肉の利いた歌詞と移民問題の闇。映像にする意味が十分すぎるほどあったカメラワークや映像演出の美しさ。ワシントンハイツで暮らす人々、そしてコミュニティへの敬意と愛、先祖への誇りがひしひしと伝わる細部へのこだわり。リン=マニュエル・ミランダは大天才だしジョン・M・チュウ監督と組ませたのは大大天才。いや〜〜良かった。全ての要素が良かった。
観た後はかなり色々考え込んでしまったし、この作品をしっかり語るには自分のアメリカの移民問題とヒスパニックへの理解が浅すぎると感じる。でも普通にエンタメとして楽しい!ノリノリで身体が動く!って作品に仕上げているのがすごい。
いやーーーいいねいいねーーーー!!楽しいねー!!!往年のミュージカル映画へのオマージュも良かった。WSS見たくなっちゃった。
コミュニティの抱える問題やその向き合い方がリアルで、パンフで見た感じ映画化の際の再解釈がすごく良かったのだろうなと思う。今の時代に合っていたな。
「現実を直視しても辛いだけ、今はみんなで明るく歌って踊ろうよ(すごくラテンっぽい)↔︎誰かが変えていかないと一生このままだぞ」も「与えられた場所で咲きなさい↔︎自分の人生は自分で掴み取れ」も、相反する価値観がきっちり同居できている。
作品全体を通して強い絆で結ばれたコミュニティや祖国への想いが印象的だけど、単純に「故郷がいい/故郷を出たい」という話でもなく、世代によってイメージする「故郷」も違う。英語もできずアメリカに来て死に物狂いで働いて、それでも死ぬときは祖国に骨を撒いて欲しいと願う移民第一世代。生まれた時からアメリカが故郷である第二世代以降の若者たち。もし親の世代からアメリカ人だったら、もし自分が今でも祖国に暮らしていたらというifは移民の子どもたちはみんな考えるものなんだなとキャストインタビューで学んだ。キャストがすごく思い入れを持って、自分たちの物語として向き合っているのを感じたな。そしてヒスパニックではないもののチュウ監督がすごくマッチしているのも移民同士で、異文化コミュニティへの深いリスペクトがあるからだろうな。little details that tell the world we are not invisible.という台詞がずっと心に残っている。小さなことで尊厳は保てる。
町中の期待を背負ってスタンフォード大に進学しても人種差別にぶつかるし、貧乏暮らしで肩を寄せ合って暮らしていても地価は高騰し続けていていずれはみんな住めなくなるし、どれだけ優秀で努力していても不法移民にできる仕事は少ない。宝くじが当たったくらいでは全ての問題は解決しない。冷静に考えてかなりシリアスな状況ではあるのだけど、ヘビーな題材を扱いつつ御伽噺としてまとめる脚本のバランス感覚がすごかったな〜。(ウスナビが昔々…と振り返る形で話が進んでいく形も上手い…ミスリードも上手いな笑)
キャストみんな良かったけど主要キャスト以外だとやっぱりリン演じるかき氷おじさんが出てくるところはめちゃくちゃ注目してしまったな。ゲスト出演かと思ってたらわりと重要どころだったwソロが素晴らしかったアブエラ役は舞台版もオリキャスらしく納得。美容院3人組もすごーく可愛くて好きだった!オーナーはRENTのミミオリキャスだったびっくり。数年前の制作ならウスナビはリンだっただろうし、バネッサはバネッサ・ハジェンズも想像してたなー。(舞台版出てたよね)けど今のキャストが全員最高だったので、そして何より監督が最高すぎたので今回の制作で良かった…。
インザハイツ舞台版は2008年のトニー賞パフォーマンスを観て「私の英語力ではこのラップを理解するのは無理だ…」と思ってBWでも観劇は避けていたので(笑)具体的なストーリーも今回の映画で初めて知った。字幕付き映画になってくれてほんとありがたい。映画鑑賞後に舞台映像も追いかけて見たけど、私は映画版の方が好きなパターンな気がするな…。舞台の方が脚本がもっと若者の群像劇っぽくまとまっている感じがするのと、今回の映画化は映像の強みをめちゃ活かせていたなあと思うので。
私は練りに練られた完璧な舞台セット+観客の想像力に勝てる映像ってあまりないと思っていて(例えばマンマミーアの映画は圧倒的に美しい海のロケ映像が素晴らしかったけど、舞台を観ながら想像する海だって相違なく美しいのではと思うし、オペラ座の怪人は"劇場内で劇場を観る"という行動が幻の世界を作り、レミゼはセットが削ぎ落とされた舞台だからこそ伝わるものもある…とも思う。)逆に映像作品の舞台化が映像を超えることもあまりないと思っている。(LKくらい圧倒的に舞台にしかできない表現をしていないと完璧な原作には勝てない。)だからこそ映画化するからには映像にしかできないことをやらなきゃ意味ないと思っているんですね。インザハイツはワシントンハイツでロケできる、というリアルな土地の強みに加えてカメラワークとか演出がすんごい良くて、映像にしている意味があるなーーと思うシーンばかりだった。実はRENTも映画版の方が好きなので、ああいう装置の舞台×NYロケは相性がいいのかもしれない…。
はーしかしこの作品を20代で処女作として出したリンはほんと天才だし、これがあってのハミルトンなんだなと納得したし、チュウ監督がWicked撮ってくれるの期待しかないーー嬉しい楽しみーー!今回ずっと楽しくてカットできるシーンは無いものの上映時間は長いし幕間入れて2幕物にしても良いのでは…と思ったのだけどそろそろミュージカル映画にそういうの導入してくれないかな。レミもトイレに抜ける人多かったし。
リンの出てたミュージカル映画感想とか