待ちに待った公開日のレイトショーでメリポピリターンズを見てきた。
ディズニーの数多くの名作映画の中で「メリーポピンズ」は少し特殊な立ち位置にある。プリンセスが出てくるわけではなく、ディズニーが初めて2Dアニメとの融合など独特の手法に挑戦していたり、アカデミー賞で13部門もノミネートしたり(大女優ジュリー・アンドリュースもこの作品で主演女優賞を授賞しているし)そしてとにかくウォルト・ディズニーがこの作品に特別な情熱を持って向き合っていたことは有名で、映画化までのエピソードだけで映画が1本作られているほど。
こちらの映画も非常に名作なので未見の方はぜひ…。
私もメリー・ポピンズは大好きで(特に舞台版がめっっちゃ好き)ストーリーも音楽も舞台も作品の随所から滲むイギリスの空気も全て好き。50年ぶりの続編ということで不安もありつつ、ディズニーにとって特別な作品であるメリポピで適当な続編を作るはずがないし、素晴らしい予告編を見てからはとにかく期待だけを胸に公開を待っていた。初日にドルビーアトモスで見たリターンズの感想は、とっても楽しかったし期待通りだったし、何よりここまでスタッフの1作目への愛が感じられる続編映画を見られてとっても幸せ。随所にある前作のオマージュ、曲の中にふわっと香る前作のメロディ、「こんなところにこのアイテムが!」とファンに嬉しい隠れミッキーのような仕掛け。わざわざ2作目作る必要あった??と思うような続編が多い中、リターンズはストーリー的に絶対に必要な続編というわけではないものの、1作目へのリスペクトに満ちていて、全員が1作目を尊重して楽しんで作ってくれたんだなぁというのが伝わってきた。私はOPのシンデレラ城の背景がロンドンになっている時点でちょっと涙ぐみました。笑
ストーリーはまあ、ご都合主義だし、全体で大きなドラマが動くというよりは見せ場となる場面場面の繋ぎ合わせという印象で、(そのちぐはぐさ、支離滅裂さの中に大事な言葉が印象的に散りばめられているのがメリーポピンズらしさなのだけど)リターンズだけを見た人にとって純粋に面白い脚本なのかどうかはわからない。でも、徹底して「子どもに夢を見せながら、大人を救っている」のがメリーポピンズで、それこそがPLトラバースの一番伝えたいテーマだ、ということを感じられたのが嬉しかった。その上で、「魔法は子どもの前でしか怒らない」というセオリーが崩れて、最後には大人も一緒に空を飛べる、という変化があったことも良かったな。前作公開時の50年前から現代に変わった価値観を織り交ぜつつ、メリーポピンズらしさは残してくれていた。ほんのりネタバレだけど、最後の「時間を巻き戻す」のが魔法を使うSF展開になるのではなく、アナログなのがすごくいい。彼女の魔法はイマジネーションのためにだけある。
そしてメリー・ポピンズを演じたエミリー・ブラントが本当に本当に本当に良かった!メリーの役作りとしては、元祖のジュリー・アンドリュースよりかなり理想的なのでは、と思うくらい。ジュリーのメリーはちょっとツンとしつつ朗らかなナニーだったけど、エミリーのメリーは気位の高さ、ちょっと融通が効かなさそうでシニカルだけど実はお茶目というバランス、優雅な身のこなし、全てがメリーポピンズだった。元々、超・イギリス気質な原作をディズニーがアメリカナイズしていることはメリポピの唯一残念なところで(このあたりのエピソードが映画「約束」では語られている)私は原作に役作りを近づけたロンドン舞台版メリポピのメリーが大好きなのだけど、(イギリス版とアメリカ版で演出も異なる)エミリーのメリーはかなり原作を意識して役を作っているんだろうな、とわかる。
そして他のキャスティングもとっても豪華かつ、そこにその配置か!と感動するメンバー。特にリン=マニュエル・ミランダの配役は天才でしょ。エミリー・ブラントとコリン・ファースがメリー・ポピンズの王道だとしたら、ジャックはまさに現代のディズニーだからできる配役。ミュージックホール"A Cover is not The Book"のラップパートは本領発揮って感じでワクワクした。恋愛にならない掃除夫とメリーの関係、やっぱりいいなあ。昔からバートとメリーの関係に憧れていたのだった。
メリル・ストリープは流石すぎるというか、死角が無さすぎてもはや感動が薄い。笑 何をやらせてもできてしまうのだよな。コリンファースの悪役もいいし、アンジェラ・ランズベリーの存在感もすごい。バードウーマンならぬバルーンウーマン、という役柄も素敵。でも何より感動するのはヴィック・ヴァンダイク!!!すごい!!何あの軽快な動き、CGじゃないの?1作目のバートがあんな形で出演できるなんて、今だからこそできた豪華なプレゼントだなあ。
1作目からの続投といえば、アニメ部分のアニメーターさんも、1作目で参加された方がいらっしゃるらしい。あの昔ながらの2Dアニメシーンは逆に新鮮で、昔から好きだった子たちに再会できたのも嬉しかった。ペンギングッズ欲しいな…。
あとあと、衣装が全部可愛すぎた!!子供達のお洋服もとっても可愛かったし、メリーが着ていたブラウスやコートや帽子や手袋、全部商品化して欲しい。素敵素敵。本当に可愛い。ずっとああいう格好をしたい…最高。
ということで愛とリスペクトが溢れる完璧すぎる続編(エンディングロールにPLトラバースの名前が出た時に泣いた)だと大満足だったのだけど、唯一前作には敵わないな、と思ってしまったのは曲。どれも良い曲だし、今もサントラを繰り返し聴いていてお気に入りも何曲かはあるものの、前作のように見終わった瞬間から頭の中をリフレインするような、強烈に耳に残るメロディは個人的にはなかった。むしろ映画を見ていない人ですら何曲かは口ずさめるような曲をあれだけ生み出している1作目がすごすぎるんだけど。ただそれを踏まえた上でも全曲書き下ろしで勝負したことは本当に偉いと思う。 "Trip a Little Light Fantastic"は前作の良いところ取り(掃除夫たちのタップ、群舞、自転車芸にsupercali〜のような言葉遊び満載の歌詞!)のようなこれぞミュージカル映画!という名場面だし、ミュージックホールのショーシーンはエミリーとマニュエルの魅力大爆発(本の舞台セットも可愛い!)だし、”Can You Imagine That”は本当にワクワクするし…「本当にこの世からなくなるものは無い」としっとり歌う”The Place Where Lost Things Go”も名曲。毎日サントラを聴きながら、スルメ盤だな〜と楽しんでいる。ブルーレイ発売が楽しみです。
愛する舞台版、日本でも再演して欲しいなー。