最高の女たちの祭典 オーシャンズ8

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1年以上も公開を待ち続けていたオーシャンズ8を見てきた。
最高!最高!!こういう映画を見たかった!!好きすぎて公開1週間以内に2回見た。

本当に元気になる映画だった。豪華なキャストと彼女たちに相応しい煌びやかな舞台メットガラ、くるくる変わるおしゃれな衣装、テンポの良い脚本と音楽に映画館にいる間ずっとワクワクしていた。

古き良きハリウッドのオマージュとも言われてきたオーシャンズシリーズが、登場人物を全員女性にするだけで新しい価値観を持った映画のようになるのはとても面白いなと思う。
男性同士の「王道」なやりとりを女性がやると「斬新」に見える。「美女と野獣」の実写化で有色人種が多く起用されているのを見た時にも思ったけど、ベースが同じ作品でも演者が変わるだけで受ける印象が大きく変わっていた。

ストーリーは歴代オーシャンズシリーズそのまま「オーシャンズが呼び集めた仲間たちと金庫破りをする」だけなのだけど、とにかく全てがスマートでオシャレ。
ケイパー・ムービーでありながら「武器は持たない、ドンパチやらない」というのはこれまでのソダーバーグ監督の美学が貫かれている。私は人が突然死んだり血が出たり爆発したりするシーンが非常に苦手なので、そういうハラハラが起きないオーシャンズシリーズが大好きなのだ。素敵な物を盗むのに人を殺したり傷つけるなんてナンセンスだしね。 

そもそも彼女たちの盗みの動機も「多大な借金を返すため」とか「死んだ夫/子供の敵討ち」みたいな大仰なものではないのが良い。
デビーも「得意だから」と言っていたし、誘われたメンバーも「そりゃやっぱ大金欲しいじゃん?」みたいな感じで参加している。(デビーの「元彼への復讐」は少し描かれるけど、本当にそれだけが目的ならもっと簡単な方法で痛めつけることはできるはずなのだ。)
別に誰も命がけでやってないし、そもそもやらなくてもいい馬鹿げた大博打をノリでやっちゃうのが楽しいのである。本人たちだけの美学が貫かれた、男なら「ダンディズム」とも呼ばれるものを女だけでやっているところにこの映画の痛快さがある。

そして博打を打つのに大層な理由が必要でないように、冗長なお涙頂戴のドラマや圧倒的成長物語も必要ない。
それぞれがこれまで磨いてきたプロフェッショナルな技を完璧な計画(現実的かどうかをつっこむのは野暮というもの)とチームプレーをもってスムーズに遂行する。
誰も泣いたり喚いたりパニックに陥ったりしない。お互いの足を引っ張らないし、仲間割れをしない。

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女がたくさん出てくる映画で、女が女を一切裏切らない。もうそれだけで最高では?
アミータ役のミンディ・カリングが対談インタビューで語っていた言葉が印象的だった。

「彼女たちは犯罪を行なっているのであって、男をめぐって戦いを繰り広げているわけではない。男の影もないしロマンスもない。私たちの会話は男についてじゃない。だからこそ刺激的だった」

女が集まれば必ず男の話で揉める、女の敵は女、みたいなくだらないルールが全く通用しないのは見ていて本当に爽快だった。

かといって彼女たちは親友ごっこをしているわけでもない。これからずっと一緒にチームでやっていくわけではないだろうし、本名すら知らない人もいる。
お互いの能力を認め合って助け合って大仕事を終えて、やったぜー!って盛り上がってフェアな分け前を持って好きなことやって、それでいつかまた会うかもしれないしもう二度と会わないかもしれない。そんな「部活」というより「オフ会」って感じの関係が最高だ。(その集団に対して「友達が欲しくて」と参加を決める彼女も、とても良い。)

しかしやっぱりこの映画を最高の作品にしたのは8人のキャラクターとそれを演じるキャストだと思う。

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全員が女性なのはもちろん最高だし、多様性を意識しているのも良い。白人も出身地はアメリカ、イギリス、アイルランド、オーストラリアとバラバラな設定だしインド系、アジア系、黒人もいる。年齢は20代〜50代まで揃っているし、未婚既婚子持ちもいる。年齢がバラバラな女性が協力し合う話って、実はあんまりなかったように思う。

個性がぶつかり合って食い合いになりそうなキャストの中でも特筆すべきはやはり主演コンビ、私としては特にケイト・ブランシェット様でしょう。安定の演技力と美貌、ルーの謎めいたキャラクターとお似合いすぎる衣装、デビーを黙って支える姿勢、完全に夢女にされてしまう。結婚したい。「キャロル」の時も思ったけど、ほんと女が抱かれたい女ナンバーワンだと思う…。

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サンドラ・ブロックも長身なので、二人で並んで歩く姿の絵になること!サンドラは最近は庶民的な母親役などが印象的だったので、やっぱりキメキメなの格好良い!キラキラしてる!!と感動した。

デビーとルーはダニーとラスティのように今後シリーズ化してもずっと登場してくれるメインコンビなのではないかな。(10でなくわざわざ8からカウントしているあたり、そのうち9,10と続編があるだろうと期待してる!)
この2人、過去にどうして組んでいたのか、出会いとか、デビーがいない間の話とかめちゃくちゃ知りたいけど、公式がそこまで書いてくれないのが魅力という感じもして、すごく二次創作しがいがありそうな関係性だなと思う。だって何の連絡もなく勝手に男と組んで刑務所入っちゃった相方を5年も待って、呼び出されたら何を問いただすこともなく協力するんだよ…。

そしてこの二人と張り合うセレブオーラが出せるアン・ハサウェイは本当にすごい。
良い子ちゃんキャラでバッシングを受けた(あのバッシングも意味がわからないと思ったけれど)過去や、アマンダ・セイフライトとのドレス事件など、セルフパロとも言えるネタがたくさん散りばめられているキャラクターをコミカルに演じきっている。
ちょっと自意識過剰だけどプロ意識が高く、実はすごく人間味もあるダフネ、とても魅力的だった。産後でふっくら(って言うほど全然太ってないと思うけど、公式でも本人もふっくらしてるって言ってるし…)しているのがまたウルトラセクシーで美しい。

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キャスト発表の際に一番「どんな役なんだろう?」と不思議だったヘレナ・ボナム=カーターはさすがの役作りで、本当に実在しそうなデザイナーになっていた。役作りで洋裁も学んだそうで、さすがです。
普段エキセントリックな役をしまくっているので、普通のメイクの人間をやっているだけでいつもびっくりしてしまうのだけど(笑)本当に演技が上手いなあ。小心者で可愛くて、でも確かに一時代を築いた実力があることを感じさせるローズだった。
そしてブランドのモデルと思われるヴィヴィアン・ウェストウッドのオマージュなのか、カルティエのネックレスを安全ピンで代用している場面はにやっとしてしまった。

地味に過去が一番きになるのはタミーさん。「盗品トラックから強奪」って、どういう手順で??何してたの??デビーとルーとはどういう付き合いだったの??そして彼女は実は一番ハイスペなのでは…と思う。オールマイティに有能でどんな場にも溶け込めて、どこで何しても成功しそう。彼女が夫や子どもたちに一切何も言わずに犯罪集団で活躍し、するっと生活に戻っているのも素敵だった。格好良い。

アミータが実家暮らしのコンサバいい子スタイルからどんどん変化していって、ラスト(ネタバレなので伏せますが)アレが成功しているのもハッピーで良いし、飄々としているコンスタンスがユーチューバーになってはしゃいでいるのも可愛い。デビー&ルーが彼女を勧誘する際に「で、私の時計は返してね」とスリを見破るシーンは11のライナスを思い出した。
ナインボールはドレスアップシーンの堂々たる美しさが圧巻すぎて、さすがリアーナ様としか言えない。メットガラの主役を張るお方…。コンスタンスのドレスアップも最高に好きだった。普段地味な格好をしている女子が完璧なヘアメイクをしているのを見るのとっても楽しい。
とにかく主要メンバー8人全員がとても個性的で魅力溢れるキャラクターとして描かれていて、それぞれのスピンオフが見たくなってしまう。けどきっと、詳しく描かれていないのが粋なんだよなあ。

過去作のキャラクター、ホテル経営者ルーベンとイェンがちょこっと出てきたのも嬉しかった。そしてあそこまで死んだか死んでいないかわからない、と強調されているダニーはきっといずれ再登場があるだろうと踏んでいる。(続編が無いとは思っていない。)

メットガラはアナ・ウィンターが監修したらしく本当に目がいくつあっても足りない豪華な画面だったし、カメコ出演しているセレブたちも知識がなくて全然見分けられなかったので、ブルーレイをコマ送りしながら見たい。劇場の大画面でもあと1,2回は目に焼き付けておきたい。久しぶりにこんなに楽しい映画に出会えてとてもとても嬉しい。 


この映画で何か気付きを得たみたいなことを言うのも野暮だと思うのだけど、
私たちはそれが得意でも不得意でも、
誰かのためでなく自分だけのためでも、大層な主義主張がなくても、
若くても若くなくても既婚でも未婚でも子持ちでも実家暮らしでも、
ただやりたいからという理由で好きなことをやっていいんだよね!!
という元気をもらえる映画だった。これからも欲しがります負けたって!