月組の芝居魂が楽しめる「応天の門/Deep Sea -海神たちのカルナバル-」

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『応天の門』『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』を観ました。月組さん、今回も人気のようで2階席にも立ち見が出ていて驚いた。(落ちないのか不安になる)春は予定が立て込んでおりタイミング的に無理かもなーと諦めかけていたので、一度でも観劇できて嬉しい。

応天の門

めーーちゃくちゃ面白かった!!!大満足!!!テンポの良いストーリーも、和風テイストの曲も唐風のお衣装も良かった。

観劇前に原作を1巻だけ履修して、業平と道真の出会い部分や各キャラ設定はつかめました。今回の百鬼夜行の話は4巻くらいに収録されているそうです。

謎解きもすっきりしているし、登場人物が多めかつ藤原家の人ばっかりで名前が覚えにくくなりそうなところ、それぞれキャラクターが立っているので混乱しない。これが原作付きの良いところで、舞台上でそこまで出番がなくても生徒たちが原作をしっかり読み込み役作りに落とし込んでいるので、見ているこちらも世界観にスッと入れるのだよね。(宝塚オリジナル脚本だと、配役の多さ故に何のためにそこに存在しているか演出家もわかっていないだろうみたいなキャラクターが出てきてふわふわしてしまいがち…)

そして前から言っているけど今の月組は本当に「芝居の月組」で演技の上手い人が多い!特に中心メンバー月城・鳳月・風間+娘役の彩の4人が華がある上に上手いので、そこに引っ張られて組全体のレベルが高くなっていると思う。

鳳月杏さんの在原業平はもう、イメージそのまんまというか想像通りの良さで別箱でスピンオフやってくれ〜って感じだったけど(稀代のプレイボーイが合いすぎるのはなんだろう、やはり「ロマンス劇場」のハンサム由来かな…)私は月城かなとさんの菅原道真にかなり驚きました。宝塚のトップスターって当たり前だけど必ず主役をやって多くの場合が当てがきのキャラをやる(原作付きであっても主演に合いそうなものを持ってくる)ので、良くも悪くもカラーが固定してしまいがちだと思うんだよね。なので男役は二番手の方がいろんな役を演じられて旨味がある、というのもよく言われる話。なのに月城さんはキラッキラな王子ビジュアルでトップになって以降も、かなり幅広い役を演じ分けている。毎回顔も声もガラッと変わっていて、本当にこの人は役者だなあと感心するのだった。菅原道真も宝塚ナイズしてキラキラさせてくるのだろうなと思っていたら想像以上に原作そのままというか、厭世的で学者肌でしかし正義感は強いおぼっちゃまに仕上がっていてびっくりした。ポスタービジュアルがあんなに麗しいのに、銀橋にいる時とか漫画そのままの三白眼に見えたし。メイクと表情がすごい!

海乃美月さんの昭姫はちなつさんの業平同様、彼女のイメージにぴったりの役だな。ちょっと姐さん女房っぽい雰囲気が似合うので、道真を諭すパートナーに合っていた。女性キャラ少ない原作物の宝塚版あるある、謎の恋愛要素が入っちゃうのかなと怯えていたけどそんなこともなく、今後もいいビジネスパートナーでやっていけそうなラストで良かった!

あとはやっぱり風間柚乃さん。いつも思うけど抜きん出て上手いよねえ。癖のない上手さというか、何にでも化けられる人だなと。好青年役のイメージが強かったので悪役が新鮮で良かった。吉祥丸への微妙な執着も含めて人間味のある悪さで格好良い。メイクも良かったなー。風間さんずっと月にいてほしいよ。(番手的にいつシャッフルされてしまうかハラハラしてしまう)

光月るうさんの良房もさすがの貫禄。風間さんとのやりとりが同じ陣営だけどお互いに利用し合っているのが伝わる緊張感で良かった。専科かな?と思ったら光月さんだった!と思えるのもこれが最後なのね…さみしい。

あと娘役でダントツ上手いなと思う彩みちるさん。彼女も月城さん同様、本当に見る度に全然違う役をこなしていてすごい。白梅かわいかった!彩海せらさんもいつもながら器用で、この実力派コンビが下級生(お二人ともいうほどもう下級生でもないのだけど)の底上げをしているなと思う。よくカップルを組んでいるので2人並んでいるとニコニコしちゃう。

礼華はるさんの常行も漫画では活躍してそうな気配を感じる厚みで良かったな。あと千海華蘭さんの清和帝のなんもわかってないけどピュアピュアな喋り方がかわいかった。あどけないので下級生が演じているのだろうと思ったら研17・今回が退団作ということに驚き。私はこの時代の朝廷モノあるあるで、「帝は人格的には非常に優れているが家臣たちの謀略には気付かない/もしくは気づいていても諦めている」「操り人形となっている幼い帝は心根の優しい人物である」時の、おさない上品な喋り方が好きです。「○○してたも」みたいなやつ。

俺たちの戦いはこれからだ!なラスト、道真がひとり歌い上げて終わるかと思いきや(あの曲、道真といえば梅、という観客の心を満たしてくれてありがとう)藤原家がラスボス四天王みたいにバーンと登場するのツボでした。

Deep Sea -海神たちのカルナバル-

[海底の奥深く、地球のマントルに近い熱くたぎる場所で海の神が治める世界のカルナバルが幕を開ける!海底神殿に集う海神たちが、見たこともないような深海の美を繰り広げる情熱のカルナバル。]

説明を見た時から頭にはてなが飛んでいたが、見ている間もずっと「なんだこれは…」と思っていた。海神が何なのかわかんなかった!ずっとよくわかんなかった!普通にラテンショーにしてくれていいのに!海モチーフのショーって航海とか人魚とかは好きなんだけどな…なぜラテンを海の中で…いや好きだった人はすみません。基本的に稲葉さんとはショーの好みが合わないんだよな。

ただチョンパが見られたのがめちゃくちゃ嬉しかった!!!何年振り!?パッと照明がついた瞬間に客席が「おおお」とどよめくあの瞬間、マスクの中で満面の笑みになってしまう。しばらく組子全員が出演すらできない期間があったことを思うと、やっとここまで戻ってきたかと嬉しかったな。

なんだかんだ現在は月組を一番観ていて生徒の顔もわかるので、好みの場面が全然ないなーと思っていても楽しめるのであった。いや本当に曲も衣装も振り付けも久々に1ミリも刺さらなかったな…。ちなつさんの女役で美しい背中とおみあしを拝めたこと、好戦的なデュエダンは良かったです。

応天の門がコンパクトにまとまっていてすごく良かったし、やっぱり2幕物は生徒たちが楽しそうで良いなーと思ったのでした。

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