オスカル様の解釈一致だったのでOKです ベルサイユのばら映画版

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30年来のベルばらファンである。もちろん私が生まれるずいぶん前に刊行された作品ではあるのだけど、私が人生で初めて読んだ漫画が小学2年生の時に見つけた母所有のベルばらだった。オスカル様に夢中になり台詞をすべて覚えるほど読み込み、作中に登場するドレスを模写するのが大好きな子どもだった。昔のメールアドレスにはジャルジェという言葉が入っているくらい、本当にオスカル様が好きです。

そんな私、いかなるメディアミックスを見ても結局は「原作こそ至高」となるので今回の映画版はどうなんかな〜わざわざ令和に映画にする意味ってあるんかいなと懐疑的だったのですが、この度ネトフリで配信開始されていたので見ました。

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やはりあの超大作を2時間にまとめるのは容易ではなく「忙しい人のためのベルばらダイジェスト」って感じになっちゃうのは致し方ないのだが、思っていたよりかなりよかった。これまでのメディアミックスの中でもかなり上位に好き、ていうかぶっちゃけ宝塚版より好き、なぜならオスカル様の魂の高潔さと心の移り変わりをしっかり描いていたから!!!

オスカル様の女性としての苦悩より(フェルゼンへの想いとか描写がかなりさらっとしていて驚き)人間オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェとしての苦悩に焦点を当てていたのがすごく現代的な解釈!と感じた。個人的に宝塚版のオスカル様は女女を主張しすぎていて合わない派なんだよな。旧アニメ版はそもそも原作と大きく違う展開などもあるし時代もあってさらに合わない。

心底アントワネットを敬愛し命をかけて仕えていたオスカルがなぜ王家に反旗を翻す側になったのか?彼女も用意周到に準備していたわけではなく、でも長い時間をかけてフランスの体制に疑問を抱くようになっていた…という経緯が全体の尺のわりにかなりしっかり描かれていた。フランス衛兵隊への異動願い、隊員との信頼の構築とかちゃんとドラマとして描いていたし。そして民衆に銃を向けろと命令された日に人間として自分の気持ちに向き合った結果があの行動だった、平民の革命への共鳴とアントワネット様への敬愛は矛盾しないんだよね、という、ちゃんとそこが描けているのが見事だった。(宝塚版のオスカル様はそのあたり脚本がぶつ切れで、オスカルってこういう役なの知ってるよね?という観客への甘え信頼が強すぎると思うんですよね)

というかそれは映画が原作をすごく丁寧に再現してくれてたからなんだけど。革命に関する部分では大事な台詞全部取りこぼさないでくれてたから。衛兵隊の処分時の「心は自由だ」と革命当日の「自由なのは心のみにあらず〜」の台詞を全文残していることに信念を感じました。ジェローデルとのやりとりもほぼそのままで嬉しかった。オスカル様の気高く高潔な生き様を見られて満足です…。

 

ミュージカルらしい、と聞いていた音楽中心の映画の作りについては、うーーん?ミュージカルというよりはキャラソンっぽいなと感じたのだけど、歌詞はちゃんと流れに沿っているし、あの長い話をまとめるには良い手法だったのかな?たぶん。私はプラスにもマイナスにも捉えなかったな。

澤野音楽自体は元々好きで、進撃の巨人はOSTレンタルして聴きまくってたなあ。仮面舞踏会の曲は何か始まるドキドキ感があって格好良かったし、主題歌のメロディを後半で市民の蜂起の曲にしていたり、リプライズがあるのはミュージカルぽいかも?ただどの曲も初見の人が映像を見ながら歌詞を追っても何の話かわかるのかな…?とは感じたな。

でも全体的に制作側の「本当は!もっと!色々あるんです!すごく面白いんです!原作を読んでください!!」という気持ちが溢れかえっているのを感じたので、ここ削ってるのないわぁ〜という不満は驚くほど少なかった。デュ・バリー夫人のくだりがダイジェストになった時点で「あ、こういう感じでいくのね」と覚悟もできたし…。ロザリー、黒の騎士あたりが消えてアンドレの失明理由が改変されたけどそれもあまり違和感はなし。ベルナールの活躍が増えていた。(ベルナールって便利な役だよね…)

もちろん贅沢を言えば「きょうはベルサイユはたいへんな人ですこと!」は聞きたかったしそこで「この御方は生まれながらの女王なのだ」と感服するオスカル様は見たかったし初見の方々に「あ、この元ネタってベルばらだったんだ!」と思ってもらえるような台詞(「文句があるならヴェルサイユへいらっしゃい!」など…)も入れてほしかったし、ここまでオスカル主役の話なのに今宵一夜で「千のちかいがいるか 万のちかいがほしいか」が無かったのは嘘でしょ!?と思いましたが…いやでもねそんなことは問題ではない、全員原作を読めばいいのです。この映画を見てまだ読んでいない方はいらっしゃらないと信じていますが必ず読んでください。

でもSNSなどで感想を検索するとこれまで一度もベルばらを読んだことない人も傑作と絶賛していたりオスカル様のファンになっていたので、原作ファンからするとあの名場面もあの名台詞も削られている!と思ったけど、作品の核はちゃんと伝わってるんだなと嬉しくなった。

 

今回の映画ならではで良かったなーと思ったのは背景の描き込み!!宮殿の内装やパリの様子などなど、こんなにしっかり作り込まれた背景でベルばらが見られたことに感動。そして令和の作画になっているものの、要所要所の絵が原作読者には「あのページのあのコマ」と明確にわかるように原作に寄せてくれているので、原作の背景をリアルにしたらこんな感じだったのかな、と思えるような映像だった。

宮殿はその麗しさが眼福だったし、終盤の革命パートでは「衛兵隊ってこんなに人数がいたんだ(そりゃそうか)」とか「広場の戦闘ってこんな感じなんだ、バスティーユってこんな高低差なんだ」とこれまで何百回と見てきた名場面に新たな気付きがあったのが嬉しかった。アンドレの死に嘆き悲しむ場面が奥で、手前に戦闘の勝利を喜ぶ市民が描かれている構図なんかも斬新でよかったな。

それからキャスト!!文句なしによかった!特に沢城みゆきさんのオスカルと平野綾さんのアントワネットの加齢の演技がさすがすぎる〜。アントワネットが少女から恋する女性に、王妃に、母に、悲劇の女王に…と内面に合わせて声が変わっていくのすごかった。フェルゼンが加藤和樹さんで、二人はフランス革命物ミュージカルの常連でもあるので親しみが湧いたよね。

今回はオスカルに焦点を当てた作品だったけど、オスカル死後のアントワネットの生き様こそ「ベルサイユのばら」なので、アントワネット編もやってほしいなあ。本作のエンドロールで文字と静止画でその後の様子をただ流す、というのは悲劇性があってかなり良い作りだったと思う!さすがにアニメにしてダイジェストで見せるにはつらすぎる話だし。でもヴァレンヌ逃亡事件を見たいよね!あとベルばら的にはフェルゼンとアントワネットは一応革命時期までは真の意味では結ばれないことになってるからそこまで描いてほしいのもある。

個人的には、初見の人にぜひ見て!と勧めたいかと聞かれると「いや原作を渡したい」となるけど、すでに原作を好きでまだ見ていない人には「こういうのもアリかって思ったから見てみて」と言うかな〜て感じの映画化でした。そして何度も引き合いに出して申し訳ないが宝塚のオスカル編よりはずっとオスカル様の解釈が一致していました。(宝塚ベルばら、フェルゼン編は好きなんだけどな…)OSTもSpotifyで流していたらだんだん癖になってきたし、在宅時にネトフリで流しておく作品のひとつになりそう。

 

 

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