大好きなミュージカルWickedが映画化されたので韓国で観てきました。(日本公開が遅すぎて待てないので…)ので感想です!後半ネタバレあります。
舞台版に誠実、かつ新規客に上手くチューニングされた映画化
ティーザーが出た時点で興奮してこんなブログも書いていたんですが
もうねーーーとっっっても良かった!期待以上!ジョン・M・チュウ監督を信じて良かった!!!彼が舞台版をとっても愛して作ってくれているのが伝わってきて、そして今のタイミングでないと叶わなかったであろう主演2人が素晴らしかったので、映画化発表から10年以上待ち続けた甲斐があった〜〜!!という気持ちです。
もう何より映像美が!!!!素晴らしい!!!!シズ大学の作り込まれた世界観にはずっと鳥肌が立っていました。ハリー・ポッターの映画を初めて見て、「ホグワーツって実在するんだ!」と感動した時のことを思い出した。舞台では観客の想像に委ねられていた背景を、こんなに素敵な形で見せてくれるなんて!
私は舞台版の衣装が本当に大好きなんだけど、映画版はそれぞれの要素をしっかり残しつつ映像で見た時に華やかになるよう細部まで凝ったラインナップになっていてとても…良かった…。設定資料集出してほしいよー!
映画版でオリジナルの展開や曲順の入れ替えくらいはあるのかな?と想像していたので、ものすごく舞台版を尊重し、かつ邪魔にならない程度の補足をしてくれているなと思いました。有名ミュージカル作品の中でもウィキッドって世界中にかなり熱烈なファンダムがいる作品だと思うんですが、舞台ファンを満足させつつ映画で初めて見る人(普段ミュージカルを見ない人)も置いてけぼりにしない、すごく匙加減が上手いチューニングをしているなと感じました。歌にしても、役者に生歌で歌わせてリアリティは出しつつ、迫力で押さない、ミュージカル映画"っぽい"力加減にしているんですよね。だから本職ミュージカル女優ではない歌手のアリアナ・グランデの歌が浮いていないのだと思う。ウィキッドって本来は歌と歌がぶつかり合う、結構女優のパワーに左右される舞台なので、映像で見て暑苦しくならないようにしているなと。
またプロモーションやコラボ商品のラインナップの時点でそんな気はしていたんだけど、ティーンの子どもたちが見られる作品にしようと意識しているのかな?と感じました。もともと原作は湾岸戦争を契機に書かれたことは有名ですが、改めてこの時代にも通じるメッセージが多いなと。ファンタジックな世界の女の友情物語でありながら、プロパガンダを真っ向から描いた作品なので、多くの国のいろんな世代の人に見てほしい。
総じて大満足だったんですけど、唯一の欠点は上映時間の長さ…。3時間の舞台の1幕部分だけの映像化なのに2時間40分あって、調べた時に二度見した。映画館ではトイレに中座する人がちらほら見られたし、やはり緊張感は薄まってしまうよなーと思います。でも不要なシーンは1分もなかった!こまる!話が重くなる2幕はさらにどうしたらいいんだ!
キャストについて
とにかくアリアナ・グランデが良かった!!!本当に彼女はグリンダを演じるために生まれてきたのでは?美貌、センス、負けん気、育ちの良さからくる無神経さと裏のない親切心、チャーミングなコミカルさ。グリンダの圧倒的な魅力を完璧に表現していた。冒頭、2幕を経た彼女の憂いをたたえた表情も良かったので大人編も楽しみです。
シンシア・エルヴォのエルファバはもっとパワー系でくるのかと思いきや(トニー賞主演女優賞を受賞したカラーパープルはかなりソウル系なので)前述した通り映画にチューニングされた歌い方をしているなという印象。伸びやかな声が良くて、Defying Gravityより喜びが爆発するThe Wizard and Iが涙腺にきた。そして演技がとても繊細で…後でも書きますがダンスホールの一筋の涙にめちゃくちゃ泣いてしまった。今回、エルファバの子ども時代の描写も入れたことでより一層彼女の抱える孤独や疎外感が伝わってきました。
ジョナサン・ベイリーのフィエロは思っていた以上に良かった。想像通りメロい。ここから2幕どう変化した大人フィエロが見られるのか楽しみ。
ミシェル・ヨーのマダム・モリブルは全ての衣装が素敵で身のこなしが優雅!!舞台のモリブル先生って結構メイクが悪役だけど、映画では優美で上品なマダムのまま変化していく凄みが良かったです。ちょっと異質な感じもいい。
各場面の感想(ネタバレあり)
各シーン語りたいことがありすぎる!!!となったのでここからはオタクの感想メモです。
Overture
タイトル前、しっかり舞台版のオーバーチュアが流れるの感激。エルファバが死んだ洞窟っぽいところ?から崖に、チステリーたちが飛んでいてそこからオズの国に繋がる花畑、オズの魔法使いのメンバーが歩くのが見えて…で、オズの世界ってこんなに広いんだということにまず驚き。オズの魔法使いメンバーは映画「オズの魔法使い」そのままの見た目をしていますが、これは今回の映画化で権利関係がクリアになったからだそう。(Wicked舞台化の際はオズの魔法使いのビジュアルは権利的に使用できなかったため、グリンダのドレスがピンク→水色になったりドロシーの靴が赤→シルバーになったりしていた)タイトルバックもオズの映画をオマージュしているフォントだったね!
No one mourns the wicked
エメラルドシティの広場じゃなくて、中央から離れた土地にわざわざグリンダが出向いて告知してまわっていたのかーという発見。舞台だと結構暗い照明なのと街中のイメージだったけど映画は地方の村っぽい感じで意外。群舞なんかはいかにもミュージカル映画っぽくて、正直この場面は「こんな感じかー」て気分だった。 憂いを帯びたグリンダは良い。
エルファバの生まれた経緯、オズとエルファバ母の不倫シーンでピアノにお尻打って音が出るところなんかいやらしくなく軽快でいいな。出産の時から存在感のある銀の靴!産婆さんがクマ!!かわいい!(舞台はヤギだよね)そしてそのままほぼクマに育てられてるっていうのが、エルファバの動物への愛着に繋がってもいそうで説得力ある。
学生時代の回想の始まり方、水の中の魚→水に手を入れていたグリンダ→船→シズ大学というカメラワークがすてき!グリンダの荷物も親もピンクトーンで可愛い!
Dear old shiz
あーーーーー理想すぎる!!!これがシズ大学かーーーー!!!!
エルファバは最初から入学予定ではなく、元々はお父さんと帰る予定だったが、ネッサが心配で直前についていけと言われる、という設定変更。たしかにあの親がエルファバにわざわざ学費払うのも不思議だし、部屋割りのアクシデントが自然に見えるので良い変更。
エルファバとグリンダの初対面が丁寧になっていて良い!舞台だと最初からちょっとグリンダが感じ悪いけど、グリンダは本人なりの親切で声をかけたのにエルファバに邪険にされて「こんな失礼な人初めて!なんなの?!」ってなる。意地悪じゃなくて双方出会ったことないタイプなんだなって感じする。
マダムモリブルは教授陣の中でも地位のある人、みんなが尊敬して憧れているという描写あり。
「ネッサにさわらないで!」はそもそもネッサの意思であるという描写(その前にお父さんが手を出そうとするのをエルファバとネッサが2人同時に「さわらないで、自分でやれるから」と遮る流れがある)が丁寧。エルファバはどこまでも自分の気持ちじゃなくてネッサを守るためにお姉さんとして生きてるんだなとわかる。
魔法の力で剥がれたオズを称える彫刻板?の下に動物の学長の絵があるの、今後の展開を示していて細かい演出。
The Wizard And I
のびのびした歌声が最高〜!本当に生まれて初めてエルファバ個人を認められた、期待された、未来が開けた!という喜びの爆発が伝わってくる。テンション上がってふわ〜っと飛んじゃうのかわいい。
主に大学内を歩きながら歌って→外へ駆け出す。大学の建物が本当に美しくて眼福!なのだが急にグランドキャニオンみたいなのにオズの顔が大きく掘られてるの出てきてギャグかと思ったwさすがにナルシストすぎて気持ち悪いw
あと外、走ってると意外とすぐに崖について、その下が砂の海?みたいになっていた。オズ世界の設定があるのだろうなー。
What Is This Feeling?
映画版で一、二を争うくらい好きなシーンかも!!
2人の関係性をこの一曲で描いてるのだけど、複数のシーンを繋げてくれて舞台版よりかなり奥行きあるように見せてくれてる!これぞ映像にしかできないことだよな〜!感動。2人の部屋の陣地争い(グリンダのもので埋めたり、エルファバがやり返したり)とか講義室の席取り、体育?の授業とか。たぶん周りから見たらそこで張り合う?みたいなことも本気でやり合ってて、2人の喧嘩が対等なのが見えてよかった。
2人は真剣にやりあってるのに周りが圧倒的にグリンダの味方しちゃうだけで、いじめじゃなかったんだよな、というか最終的にはいつもエルファバが勝ってたのが見て取れてグリンダがムキーッとなるのわかる(笑)食堂はこんな感じなんだ〜とわかったのもうれしい。
Something Bad
舞台からの変更で、ディラモンド教授がエルファバに直接語るのではなくて動物教授会合みたいな集会で話しているのをエルファバが盗み聞く。ディラモンド教授以外の動物先生たちかわいい。教室も動物用のドアがある描写良かったな、
エルファバがフラッシュバックなのか予知夢なのか檻に入ったディラモンド教授を見るシーンのさしこみ、たしか後半もあった。そういう予知能力もあるのかな?
ディラモンド教授と話した後、夜の森を歩いてる時にフィエロと出会う。フィエロの従者が馬が喋る設定になっているの、良い!!なんなら人間の従者がいるより世界観に合ってるし、その後の「あなたは楽しそうに見えない」(=本心で話せる相手いなさそう)にも繋がる良い改変だなと思う。舞台だと従者と仲良しそうだったしね。
Dancing Through Life
映画で一番好きだった!!!この曲でこんなに泣くとは思ってなかった。
まずねーーー図書館が素敵すぎる!あの円形の本棚考えた人天才だよ!なにあの素敵空間!!オルセー美術館みたいに印象的な時計の針に座って読書する学生たち。絵になりすぎる。設定資料集出してほしい。
フィエロは本を踏むな〜!踏みすぎ蹴り飛ばしすぎ!!でも格好良い!振り付けがちゃんと案山子ダンスで嬉しい!
ボックが急に自分のハンカチでグリンダの汗拭くのきっっっも?!?て声出そうになった。完全に距離感おかしい人だよ。それに対してドン引きの顔せずにちゃんと笑顔でかわせるグリンダってすごい、と実感した。
エルファバへの意地悪…負けっぱなしで面白くないし揶揄いたくなってしまったんだろうな。取り巻きの2人の片方が男性になったのはすごくチュウ監督っぽいよね。
ダンスホールが水の中なのすごーく素敵!みんなで船でこっそり大学を出ていくのね〜!!素敵〜!!!舞台版の照明もゆらゆらしていたし映画の後だと最初から水の中設定だったようにすら思える。ダンスホールの演奏者は動物たち、集まってる人たちのドレスはギャツビー時代ぽい感じ。ネッサは銀の靴履いてきてる。前編、靴かなり印象づけてきますね。
エルファバの1人で踊り出すところ、舞台版だと意固地な感じだったけど、映画だと祈りみたいな。グリンダがきて一緒に踊ることでエルファバが一筋の涙を流してたのがすっごいグッッときた。2人が変な踊りしただけでそんな急に仲良くなれるかな?と思われそうなところ、描写と演技力がすごいよー。
Popular
エルファバの話に「それはmilk flowerのせいであなたのせいではないわ」「秘密かもしれないけど事実ではないわね」というグリンダの表情が!慈愛と嫌味のない育ちのよさを感じる。
グリンダの持ち物がギミックすごい、なんでも出てくるし光るしどれもかわいい〜。衣装冷静になるとすごい形なんだけど着こなしてるのすごい。
グリンダがエルファバにさしてあげるピンクの花、たぶんダンスホールに行く前にフィエロがさしてくれたやつだよね?細かな演出だけど光ってるな!と思った。
I'm Not That Girl
仲良くなって一緒に講義を受ける3人、束の間の学生っぽさ!かわいい。
ディラモンド教授が好きなポピーの花を差し入れに持ってきたけど断られて→教授が連れて行かれて子ライオンが来て感情が高まりその花でみんなを眠らすという流れ。花がくるくる回ってみんなが寝るの、画としてとても綺麗だしネッサの時の力技との対比もあってよかった。
子ライオンを自転車の前カゴに入れてダッシュするのはオズの魔法使いのオマージュですね。あのカゴがついてる自転車かわいいよな。別れた後、フィエロが思いっきりエルファバのこと気にしてるふうなのがわかるカメラワーク。
モリブル先生と感情のコントロールをするレッスン。先生の個人部屋?おしゃれだな。そして結構良いもの置いてそうなのにエルファバが割りまくってもむしろ嬉しそうにしてて、教育者としては優秀なんだなと感じるw
One Short Day
気球が招待状持ってくるのおしゃれ〜!!一気に学校の生徒たちからも認められているエルファバ。舞台だとグリンダ、フィエロ以外の学生との絡みがないので、疎外されなくなっていたんだねという安心と、こうやって一度は受け入れられたのに…という悲しさ両方がある。
お迎えの電車かっこいい〜!!グリンダの発表(ディラモンド先生を悼んで名前のイントネーションを変えるわ)に目を見合わせて会話してるエルファバとフィエロ。通じ合っている。
エメラルドシティ、最高だ〜!!!Everything is GREEEEEN!2人が仲良くはしゃいでるのすごくかわいい。ネイルシーンがあるのも新鮮だった!エルフィーもそういう女の子っぽいことしたいよね、そうだよね。
そして世界中のWIckedファンのためのサービスタイム、舞台版オリジナルキャストのイディナとクリスティンのカメコ出演!!しっかり歌うしエルファバとグリンダを模倣したキャラなの嬉しかった。お互い見せ場を奪いながら歩いてるのかわいいしイディナはDGのAh〜〜!のメロディも入れてくれるサービスまで。それぞれの役と向かい合って顔に手を添えるところ胸熱すぎるよ。2人に注目しすぎてあそこの新メロディパートあんまりちゃんと聴いてなかったw
A Sentimental Man
演出がめちゃくちゃ良い!正直この曲、舞台だと私の中ではそんなに好みではないんだけど(というかオズのソロどちらもそんなに必要性を感じていないw)オズの立体模型やスクリーンの仕掛けがとっても素敵。お城の頭の方をかぽっと取ってひっくり返すと気球になるのとか、月をボールみたいに投げるのとか。
道を何色がいい?と聞いてぽちぽち色変えて黄色にしてたの、ここでもオズの魔法使いと関連性出してくるんだなー。
グリモワは呪文唱えると文字が光ったり翼の形に浮き上がったり、映像ならではな細工が。チステリー追ってくるところビクッてなった!猿たち普通にこわい。言葉わからなさそうと思ったけどモリブルに家族の身が惜しいなら、て脅されて言うこと聞いてたな。
Defying Gravity
エルファバは初めて呪文を唱えて、自分が意図した通りに魔法が使えた(これまでは感情が爆発した時に発していただけ)ことに混乱していて、プチパニックになっている。そこにオズの化けの皮が剥がれたのでより一層この人信用できない!となって逃げ出す。→から、グリンダが追いかけてきてとにかくまずは落ち着いて!と言う…という感情の流れが分かりやすかった。最初からオズのことを断罪するほど冷静じゃないんだよね。エルファバもまだ若くて未熟で、訳がわからないまま逃げていた。
I hope your happy〜で2人で箒を持って歌う時、グリンダの顔がめちゃくちゃ輝いてて目が希望でいっぱいなんだよね。ピンチなんだけど、あそこは2人が心からお互いの未来を信じてた瞬間なんだよね。ううう。
城の階段からの、2人で気球に乗って浮いてからのさらにまた屋根裏みたいなところに上がり…でどんどん高さが出ていく感じ、そして一度すとーんと外に落ちて子どもの頃のエルファバが見えて、Unlimited...と繰り返して覚醒してぐーーんと上がり直すのが、舞台より細かくエルファバのメンタルと連動しているように見える。よく考えたらエルファバはまだ全然魔法の力をコントロールできてないんだから飛ぼう!と思って飛んだわけじゃないんだよなと。
過去の自分と向き合って、上限を決めていたのは自分だ、どこまでもいける!と思ったから飛べたんだ。そしてそれは映画を見ている誰にでも当てはまることなんだよね、あーーこのメッセージを視覚的に出してくれるの感動よ。最後の浮遊感!!舞台の1幕ラストの感動が蘇りますね。
ラストでエメラルドシティ以外の様子も映ったのよかった。ネッサの2幕の悲劇が想像できるカット、混乱するシズ大学、雷雲を見るフィエロ…。
…はあはあ。7000字語ってしまった。余談ですが韓国の映画館ではエンドロールが始まった瞬間に照明がついて全員出て行ってしまったのが衝撃だった。掃除の人が待機しているのを感じつつ続編予告あるかも…と思って1人最後まで座っていたよすみません。
あとねポップコーンとドリンク買ったらライトドームもらえるセットがあったから買っちゃった!迷いに迷ってグリンダ!かわいい〜!
あとコンビニでコラボのお菓子見つけたので買ったえへへ。このイラスト韓国オリジナルっぽい。まじで日本もこういうコラボ展開頑張ってくださいよ頼みます。
日本で公開されるのは3月とのこと!吹替キャストに念を送っております!!韓国は舞台版オリジナルキャストが担当していてめちゃくちゃ羨ましい!日本も是非お願いします!!!!意味わからんくらい公開遅いんだからそこはなんとか!!ね!!!??
Wicked関係
チュウ監督をめちゃ信頼するきっかけとなったミュージカル映画です!!