はるこちゃんとわたし

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「わたしの節約」さんにひとり旅についての記事を寄稿しました。

setsuyaku.hikakunet.jp

ひとり旅の予定がひとりではなくなる、ということもある。明日からの旅行もまさにそう。昨年秋、「せっかくの10連休だしひとり旅でもしようかな」という私のツイートに「じゃあどこか一緒に行こうよ」と連絡をくれた友人、はるこちゃんとふたり旅をしてくる。

はるこちゃんとの関係はなかなか特殊で面白い。7年前、私たちは成田空港で初めて顔を合わせ、そのまま一緒にヨーロッパを1週間旅した。今から考えてもなかなか思い切ったなあと思うけど、初対面の人との一週間の旅はいろんな意味で自分の可能性を広げる経験だった。

彼女との出会いは例によってツイッター(私のプライベートな人間関係の7割はツイッター経由です)。しかも当時はリプライをしたことすらなく、たまにフォロワーさんと会話してるのを見るなあ、くらいの関係だった。私は大学卒業を控えていて、どうしても行きたい国に旅行すべきか迷っていた。最も愛するミュージカル「エリザベート」の聖地、オーストリアのウィーン。その前年に激安ツアーを予約までしたものの催行人数が足りずキャンセルとなってしまい、ずっと行きたい気持ちを燻らせていた。社会人になったら休みなんて取れないしヨーロッパなんて行けない(と当時は思っていた)から卒業までになんとしても行きたい。でも周りにはウィーンに行きたいような子はいないし、居たとしても現地で私の聖地巡礼に付き合わせるのは申し訳ない。思い切ってひとり旅するかな…でもヨーロッパひとり旅って、結構ハードル高いなあ(と当時は思っていた)…といったことをツイートしていたら、はるこちゃんから初めて「わかります。私もウィーンに行きたいけど、なかなか連れが見つからないんですよね。」とリプライがあったのだった。「あんまり行きたいって言う人いないですよね」「エリザベートのお墓行きたいですよね〜」なんてリプ会話をしてその時は終わった、のだが。その夜、はるこちゃんからDMがきたのである。

「3月の最後の2週間なら暇なんですけど、一緒にウィーン行きませんか?(旅行会社のフリープランURL)」

まだ4往復くらいのリプライ会話しかしていないのに、具体的な日付を添えての旅行のお誘い。冗談なのかなと思う一方で、ウィーンミュージカルオタクがウィーンに行きたい気持ちがどれほど強いか、私自身めちゃくちゃ理解していた。3月末、入社直前だし他の旅行もあるしそもそも全然知らない人だし、理由をつけて断ることはできるけど、ここで行かなかったら後悔するんじゃないか?今後ウィーンに行く機会があるとして、何年後になる?ミュージカル好きの人と行けるとも限らない。こういう縁に乗っかってみた方が人生もっと楽しくなるんじゃない??と考え、かなり勇気を出して「その日程なら行けます。行きましょう!」と返事をしたのだった。

当時私は関西、はるこちゃんは東北に住んでいたため、旅行前に会うことはできない。出発日の朝に成田空港で待ち合わせることになった。Skypeで打ち合わせしよう、なんて言っていたのに結局それをする時間もなく、パスポートの証明写真しか手がかりがない状態で当日を迎えた。成田空港で顔を合わせた時は本当に安心して、「もうこれでこの旅行は成功したようなものだね」と言い合った。

初めて会う人と一週間も会話の間が持つのか少し心配していたけど、話のネタは尽きなかった。というか、ツイッターですらそんなに交流をしていなかったこともあり、お互いの基本的な自己紹介から始まるのでとにかく話すことがたくさんあった。はるこちゃんは私よりひとつ年下で、同じように前年にウィーン旅行を計画したものの震災で断念している経緯があった。お互いにずっと行きたかった場所なのでめちゃくちゃ下調べをしていたし、目的(エリザベートやモーツァルトの聖地巡礼)もぴったり合致していたので行きたい場所が食い違うこともなかった。飛行機に乗ってから「私、海外に行くの初めてなんだよね」と言われた時には死ぬほど驚いたけど。初めて海外に行く人が、会ったこともない人に同行の声かけるか…!?そのアグレッシブさは何なの…!?

「友達として深い付き合いができる人」は必ずしも「一緒に旅行を楽しめる人」と一致するわけではない。特に長期の旅行となると行きたい場所や食べたいものの合致だけでなく、適度に別行動をしたりお互いに干渉しない時間を作れるか、疲れても不機嫌にならずに過ごせるか…など、「一緒に暮らせるかどうか」に近い絶妙な相性が必要となる。ひとり旅が楽なのはそういったことを考えなくても良い、という側面もあるわけだけど、はるこちゃんはかなり周りに配慮ができ、かつ適度に寛容で、一緒にいてストレスフリーに旅ができる人だった。

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ウィーンではシシィベアを持参してあらゆるところで撮影した

ウィーン、ブタペスト、プラハの三都市を無事に周遊し、成田で別れてからも交流は続いた。私が次にはるこちゃんと旅行をするのはその数年後、私が結婚のために離職し、長期の休みができた時だった。「せっかくだからNYに行ってミュージカルを観まくりたいな。目的が目的だし、一人で行ってこようかな。NYのホテル高いけど。」みたいなことをツイートしていたら、はるこちゃんから「えー私も行きたい!」とリプライがあったのだった。今回はお互いにこれは実行するやつだな、とわかっていた。さくさくと手配をして二人でNYに飛び、思う存分ミュージカルを観まくった。

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耐久レースか?というくらい好きなだけ芝居を観た

そして今回。3回目のふたり旅はウズベキスタンに行く。これは完全に私の希望である。というか、自分のひとり旅の行き先候補地をロンドン(観劇三昧)orモスクワ(引き続きロシア熱)orサマルカンド(ウズベク)で悩んでいるんだ、と話したら「ロンドンとモスクワは今年行く予定があるからそれ以外がいい!ウズベキスタンって何があるの?よくわからないけど桜花ちゃんが行きたいところに着いていくよ」と言ってくれたのであった。7年前に海外が初めてと言っていたはるこちゃんはいつの間にかすっかり旅人になっていた。

はるこちゃんは非常に魅力的で面白い人だ。こうして書くといつもノリで動いている人のように見えるがそんなことはなく、フットワークはめちゃくちゃ軽いが考え方はわりと慎重派だし、厭世的な本を好んで読んでいたりするし、かなり堅実な仕事に就いている。私より以前にはそういうノリで初対面の人と遊んだことはないらしい。どうして会ったこともない私に声をかけてくれたの?不安じゃなかったの?と聞くと「なんか大丈夫そうな気がしたから。私のそういう勘は当たるんだよね」と言った。
一緒にNYに行った時は、彼女はかなり大きな国家試験(たぶん普通の人は一年くらい予備勉強をするような試験)の受験直前だったのだが、なんと空港に向かう途中の本屋で初めて参考書を買って「旅行中に眺めてみるかも」と言っていた。もちろん全く開いていなかったが、試験には普通に受かっていた。そのように優秀な頭脳を持った人であるのだが出世意欲はなく、贔屓の退団公演のために月のほとんどを宝塚か東京に蜻蛉帰りするような情熱がありながら、「仕事なんてなんでもいい。趣味もたくさんあるけど、無くなってもまあ困らないかな。そもそも人生なんて死ぬまでの暇つぶしだし。」なんてことを平気で言う。彼女のそういうところが私はかなり好きだ。

そしてなかなか面白いのが、私たちはこの7年の間、海外旅行を除くとおそらく10回程度しか会っていないのである。それには私の結婚式への出席や、偶然観る回が重なった観劇後にお茶する、程度のことも含む。会おうと思えばいくらでも会える状態でありながら、この「たまにふらっと旅する関係」であるのも唯一無二の感じがして好きだ。
4年ぶりのふたり旅、前日の成田泊で打ち合わせしよう!一緒に夕飯食べようねと言っていたのに前日になって「ごめん。どうしてもレミゼが観たいんだけどチケット取っていいかな…?」と言われ(もちろん止める理由などない)、今は成田のホテルでこれを書いている。結局また現地で計画することになりそうだが、そんなはるこちゃんがやっぱり好きだ。