スリルミー 成河×福士ペア

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2018年のスリルミーが開幕した。まずは今年の新ペア、成河さん私・福士誠治さん彼のペアを観劇したので感想。

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※ネタバレ全開ですので、スリルミー未見の方、もしくは新ペア未見で情報をシャットダウンしておきたい方はご注意ください。

成河私が作る、徹底的に「私」の目から見たスリルミー、という印象。本来が「私」による回想劇なので、脚本の本質に立ち戻った解釈の舞台だなあ、と思った。そんはさんはいつもそういう読み解き方をしている気がするなあ。

これまでのペアと最も違うと思ったのは、一貫してサイコパスなのは「私」であり、「彼」は超人どころか天才でもない凡人なのでは、というように見えたところ。初日が明けたところでまだ関係性が深まっていないから?とも思ったけど、そんは私と福士彼の間には愛とか情というものが見えなかった。そんは私から福士彼への執着は本当に「スリルを与えてくれる」というもので、これまでのスリルミーから感じていた解釈「加速した彼への愛が狂気に変わった」というより、「スリルを求める私が標的として見つけたのが彼だった」という風にすら見えた。「彼と出会わなければあなたの人生は全く違ったものになっていたでしょうね」と言われるところ、いやいや人生狂わされたのは彼の方でしょ!そんは私は彼と出会ってなくても絶対何かやらかしてたよ!と思った(笑)逆に福士彼は私に出会ってなかったら数年家を出て戻ってきたら弟と和解しそう(笑)

そんは私は彼に対する動きのひとつひとつが粘着質。血の契約、「前にもやったことがある」では、え?誰と??って感じのメンヘラ感が爆発していて面白かった。「あんなに早く見つかるなんて…」でニッタリ笑うのにもびっくりした。今まで拘置所の夜で初めてその顔を見せると思って注目してたけど、そんはさんは割と早い段階から小出しにしてたね。怯えて震える場面の演技がリアルなぶん落差がこわい。なんとなくだけど、そんはさんはスリルミーという舞台を最後のどんでん返しをメインに考えていないのかな、と思った。
合間合間で挟まれる老後との入れ替わり方はさすがすぎる。頑張って大人を演じている感じがゼロ。違う役者をすげ替えているのでは?!と思うほど一瞬で別人になる。脚本全部知ってるのに一番ここにびっくりした。声と姿勢と表情だけでここまで経年を感じさせることができるのか…と感動した。見逃したけど成河さんの一人舞台見てみたいな。

福士さん彼は後半乱れ始めてからは人間らしさが出ていてとてもよかった。前半は抑えた演技だからか私に負けているというか、どこまでも私視線の物語に見えてしまったな。パワーバランスがずっと私>>>>彼って感じだったので、彼優位のように見えなかった。ずっと彼>>>私だった2人が取調室以降でガラッと逆転するのがスリルミーという舞台だと思ってたので新しい感覚だな。

福士さん彼に対して自分の中で腑に落ちないのは、弟への強烈なコンプレックスは感じるけど自分の魅力を知り尽くしてコントロールしてる感じがしないんだよな。(「レイ」の言い方とか)無自覚なのにそんは私に付きまとわれちゃってる感じする。凡人設定なのかな。福士彼が魅力的でないという意味でなく、あのサイコパスな私があそこまで執着する理由が見えなかった。これまでの彼に感じた圧倒的なカリスマ性や美貌といったもの。福士彼の何がそんは私に目をつけられた(笑)のかが気になる。幼なじみの心通ってる感じもなかったしなあ。マッチ投げるところとか、ツーカーな感じを見せてると思ってたのに敢えて全く届かない場所に投げる意地悪演出だったし。彼→私への愛情とか温度が0で、これは福士彼の特徴なのかと思いきやパンフインタビューで柿澤さんが「彼は私を愛してない」って解釈を語ってるし共通の新演出ってことなのかな?このあたりは今年の松柿ペアを見てから考え直したい。

ただ福士彼が凡人にしか見えないというのは、そんは私にそう見えていたということなのかもしれない。スリルミーは全編、私の記憶の振り返りなのだから。そんは私はどうしても「彼の言うことには逆らえない」というのが不自然に思えたし、内心彼のこと舐めてるだろうなーと思ったので。。演出の栗原さんがスリルミーの舞台装置のことを「二人だけのぶつかりあうリング もしくは 私の脳の中の小部屋」と仰っていて、「私の脳の中の小部屋!」と納得したのだった。スリルミーに彼の言い分は登場しない。

99年でも、彼の「最初からお前が」は眼鏡の件じゃなくて放火とかもっと前の段階から彼を操ってきていたことを指すように感じた。私の方も、ここは「心が手に入らなくてもいいからせめて一緒にいたい」という愛の告白場面だと思っていたけど、このペアはそもそもそんなの望んでなさそう(私が心無いサイコパスだし)で彼の「お前は孤独になる」という言葉も全く響いていないな、というのが面白い。このペアの関係性を綺麗に表している99年だなあ、と感動した。

スリルミーは演目と構成の特質上なんかあれこれ理由をつけて解釈を考えたくなるけど、単純に経験値というものもあるし、まだ未完成というか、私はまだ彼らが2回目か3回目に演じる場面を見ただけなんだから、これから変化していって当然だしそれも楽しみだな。ひとまず松柿ペアも見て、いろいろな部分でペア独自の解釈なのか、今年の新たな演出なのかを考えるのが楽しみです。