お姫様に必要なのは白馬の王子様じゃない 実写版アラジン

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実写版「アラジン」久しぶりに映画館で見たので感想。発表時から一喜一憂して初日に駆けつけた「美女と野獣」とは違いほぼ前情報なし、告知映像を見てもなんか微妙だな…と期待せずに行ったのに、蓋を開けてみたら最近のディズニー実写化の中で一番好きだった。絶対に告知映像はPrince AliじゃなくてFriend like meかOne jump aheadにすべきだと思うんだけど…!逆の意味で告知編詐欺だったよ!?

今回のアラジン実写化で特に良かったなと思うのは
①キャラクターの魅力的なアップデートと②蛇足感のなさ。

①については話題となったジャスミンの「自立した女性」へのアップデート以上に、アラジンのキャラクターがとても魅力的になっていることに感心した。個人的にアニメ版のアラジンがそこまで好きでなかった理由が、「結局のところはコソ泥だし、完全にラッキー棚ぼたで王様になっちゃうの納得いかないし、なんか誰に対しても調子の良い男だよね…」と思っていたからなのだけど(笑)実写版では彼の誠実さ、頭の良さを随所に描いていて、ジャスミンとの短い交流の中でも彼女が恋に落ちる理由がしっかり伝わる脚本になっていた。世間知らずのジャスミンが下町の男の新鮮さに惑わされたのではなく、アラジンの機転が利くところや、自分を景品のように扱う周囲の王子たちと違い彼女の目標を応援してくれる姿勢に惹かれたんだなあとわかる。あと、ポリコレ的に泥棒稼業を少しでも正当化するためか、彼なりの信念(より貧しい人に譲っていたり盗むものが食べ物→貴金属になっていたり)があったり、身の上話もアラジンがより"可哀想になっている"な、とも思った。てっきり実写映画にも舞台版オリジナル設定であるアラジンの友人たちは登場するのだろうと思っていたら全く出てこなくて驚いた。アブー以外に気心知れた街の人と交流する描写もなく、誰からも見下されている孤独な人になっている。まあ友達ときゃっきゃしながら泥棒してたらちょっとね…働けよって思うよね…。まああれだけ身体能力が高くて頭が良かったらスリ以外の仕事ができると思うが。あの境遇で純粋さを失わずユーモアと勇気があるイケメン、って白馬の王子よりレアだよな…て感じだけど、それまでのプリンセス作品における理想の男性が王子一択であったことを思うと斬新ではある。(逆に近代のプリンセス物のヒーローはどんどん内面のイケメン度が上がっているので、ユージンの実写化とか無理でしょと思う)

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新キャラ・侍女ダリアの役柄も良い!本人も良いキャラしてるし、ジャスミンの普通の女の子らしさを見せる良いポジション。ダリアとのやりとりがあるおかげでジャスミンがアラジンに惹かれる過程もわかりやすい。ジャスミンは元々かなり強めのプリンセスだったし、「好きじゃない人と結婚したくなくて家出するプリンセス」から「国の未来を考えるプリンセス」への転換は個人的にはとても自然だった。むしろこちらの方がジャスミンっぽい。

キャストについては事前にウィル・スミスがウィル・スミスすぎる…ということしか知らなかったけど、アラジンとジャスミンがイメージぴったりな上に歌もダンスも良くて大満足。そしてウィル・スミスについては本編を見ても印象は変わらなかった(笑)チャーミングで人間らしいジーニーだったけど、アラジンという作品のミュージカルらしさを一手に担うキャラクターとしてはちょっと弱いかなという印象。アニメ版、舞台版のジーニーがほぼ主役ポジションなので…。その分、ジーニーは生まれつき便利な魔法の生き物じゃなくて、ちゃんと感情のある、元は人間だったものなんだな、ということがわかる役になっていたと思う。「キャラクター」というより「役」。まあ、冒頭は船で出てきた瞬間にウィル・スミスなのでオチが全部見えちゃいましたけど…(笑)あと吹き替えをCDだけ聞いたけど山寺宏一さんがアニメのジーニーとは違う、ウィルスミスの吹き替えとしてのジーニーで完璧に歌っていてさすがすぎた…。

②の蛇足感について、常日頃から言っているけど私がリメイクや続編で一番嫌いなのが特に必要性を感じない無駄な追加設定。で、今回のアラジンは個人的には蛇足だと思う追加設定がほぼなかったなーと思う。強いていうなら隣国に攻める云々の話は必要か?くらい。ジャファーを矮小な人間にしているのも、過去設定も、「アラジンも一歩間違えればこちらのルートに入る可能性があった」と捉えられるし。

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美女と野獣の実写版は3回見に行くほど好きだったものの、新しい魔法アイテムやお母さんの病気設定については「で、それは結局この話にどんな新しい価値をプラスしたの?」と思ってしまったので…。あと美女と野獣はベルと野獣が惹かれ合う過程の価値観を現代にアップデートした結果、城と村の文化格差の話になってしまっていた側面もあると思うのだけど、アラジンは設定をフェミに寄せている割に純粋に恋愛物としてのカラーが濃くなっているような気がする。最終的にちゃんとアラジンとジャスミンの成長物語であり、どちらかがどちらかを選ぶわけではない、対等なラブストーリーに帰結しているなと思ったのでした。

ただジャスミンの追加設定は納得いくものだったものの、発表されているリトルマーメイドや白雪姫はどうなるのかな…。恋愛脳じゃないアリエルや自我のある白雪姫はもはや別人な気がする。と思っていたらちょうどアリエルの配役が発表されて、なるほど根底から違うものにするのかもなあ、と思ったところ。ただ設定を変えるなら変えるだけの理由やストーリーへの良い影響を見せて欲しいな、と期待しています。(実写アリスなんかは、設定変えるだけ変えて見た目でインパクトを出したけど別にそれが大きく活きるストーリーになっていたとは思わないので…。)

話が逸れたけどアラジン実写化は総じてとても好みでした。世界観もとても素敵だったし!モロッコとか行きたくなっちゃう。ジャスミンの衣装もどれもめちゃくちゃ可愛かったなあ。Friend like meとOne jump aheadはこれぞ実写化の醍醐味という感じで何回も見返したいシーンだったし。新曲Speechlessは歌詞がちょっとくどいなと思いつつメロディが最高だし。あとやっぱりアラジンが魅力的な男性でした。ディスニーのプリンセス映画で男性キャラに手放しで素敵!!と思うことってあまりないので(笑)強くなりたいお姫様に必要なのは守ってくれる王子様じゃなくて、肯定して支えてくれる人。という、ディズニーの新しいステージを見られて嬉しいね。