10年ぶりの劇団四季ウィキッド

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ミュージカルオタク長年の悲願・日本でのウィキッド再演!!!!東京の上演期間中に観ることができました。観劇から日が経ってしまったのですが、数年後にまた見返せるようにメモだけは残しておく…。

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劇団四季のウィキッドを観るのは実に10年ぶり。私はWickedという演目が大大大好きでして、四季以外にブロードウェイ・ウェストエンド・韓国・オーストラリアのワールドツアー・ロサンゼルス(あとUSJも!)で観劇しています。そこを含めても7年ぶり。そもそもBWオリジナルキャストのIdinaがRENTから大大大好きなので年季の入ったウィキッドファンです。はい。早口オタクになってしまった。作品愛はまた別の機会に語ろうね。

久しぶりに観る四季版のウィキッド、こんなに台詞のひとつひとつまで覚えているものかと自分に驚くほど脳内で復唱されていて、そして周囲もみんな同じ状態なので(四季会員の前売り日初日に完売していますからね…)Defying GravityはもちろんFor Goodでも2人が並んだ時から啜り泣きの嵐。客席の「くるぞ…くるぞ…」という空気で自分の涙腺もやられる観劇だった(笑)いやあ、泣いた泣いた。加齢のせいか時代のせいか、これまでとは違う部分がぐっと刺さったりして。

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今回見たキャスト。八重沢さんのマダム・モリブルと飯野さんのオズは昔も見ていたので懐かしく嬉しかった!逆に他の方は全員初見、だと思う。

三井さんのエルファバはこれまで見た誰よりも「普通の女の子」な感じがした。ネッサが父親にもらった靴を本当は自分も欲しかったんだな、とわかる表情。グリンダに帽子をもらった時に戸惑いより嬉しさが勝っている顔、それが怒りに変わり2人のダンスから友情が生まれる…踊り明かそう♪は今回めちゃくちゃ泣いたポイントでした。(「2人にとって人生で一番楽しかったのはこの日だったのでは…」と考えると泣けて泣けて)エルファバってもう女の子としての幸せや楽しさは諦めていて、その裏返しからグリンダをバカにしている子だと思っていたけど、三井エルフィーにはまだ"そっち側にいきたい気持ち"がひと匙残っていて、だからそれを振り切るDFの覚悟の強さが際立っていた。

中山さんはとてもチャーミングですごくまっすぐなグリンダだった。悲しい話をするときにしっかり顔を曇らせていて、ラストの涙が美しい。意地悪を考えるときやボックにネッサをあてがう時もあまり策略家という感じがしない。生まれた時から天真爛漫で誰からも愛される、というよりしっかり戦略を練った結果のあのキャラ。久しぶりに見て、令和の少女漫画に出てくる世渡り上手な美少女タイプだな〜と思いました。四季グリンダは優等生タイプが多くチアリーダー感がないので際どい意地悪が普通にいじめっぽく見えてちょっと浮いてる。

タティクさんのフィエロがこれまでの四季フィエロとかなり印象が違ったなー。「賢いけどバカのふりをしている王子」というより、初めは本当に何も考えていなさそう。全体的に軽くてずっと「案山子ですねえ〜」と思いながら見ていた。エルファバを選ぶことから「真実を見極める目を持っている人」というイメージがあったけど、今回見て「フィエロにはそもそも自分というものがないから、強烈な個性を持つ誰かと出会わないといけない人で、ドラマの順番が違えばエルファバじゃなくてグリンダとでも案外うまくやれたのでは」と感じたな。

印象的だったのは守山さんのネッサローズ。すごく純粋な良い子で、エルファバの才能の開花を心から喜んでいる様子が伝わってくる分、2幕がつらかった。平田さんのボックがマジでネッサに興味なさそうなのもしんどい。

 

昔は自分を貫くエルファバに目がいきがちで、2人の友情に涙しつつも、正しい道を行けないグリンダはどこかで自分の名誉欲を取ったのだ、だからフィエロに選ばれなかったのだと思っていた。2人とも大好きだけど、正しいのがどちらかといえば圧倒的にエルファバだし、学生時代のグリンダは普通に感じが悪いし。

でも10年ぶりに見て、自分でも驚くほどグリンダに感情移入して泣いてしまった。エルファバに一緒に行こうと言われてもついていけなかったグリンダ。そりゃそうだ。魔法の才能のないグリンダが行っても何ができただろう。誰にも負けない「人気を得る」才能で、別の形で力になれるかも。本当に純粋にそう思っていたんだろうな。でも次第に自分の意見なんて言えないただの客寄せパンダになっていって、人気はある一方で先生たちには馬鹿にされていて、心を開いて本音で話せる人もいない。愛し愛されると思った男性はこちらを見ていない。プロパガンダに利用され続けたんだから自分も逃げることはできるのに、役目を放棄せず、道を切り拓こうとしている彼女が背負っているものの重さを考えると切なくて。昔の四季ウィキッドのコピー【世界を敵にして、たった一人に愛されるか。 たった一人を失って、世界に愛されるか。】が大好きなんだけど、グリンダが失ったのって"たった1人"だけじゃないんだよなあと。彼女にとっての全てを失って、エルファバとフィエロの生存も知らないまま1人で国を背負っていく…う、うわーーーん!!(泣)

なんでこんなにグリンダが刺さるようになったかって、それはやはり自分が大人になって、社会に迎合しないといけない場面をたくさん経験してきたからだと思う。マチルダを観た時も「大人としては耳が痛い…」と言っていましたが、「そんなの間違ってる!」と言いたくてもね、言えない時もあるんだよ〜社会で生きてる人間だからさ〜。動物のことは気の毒だと思う、でも私に被害があるわけじゃないし、私の生活も大変だし…自分はエルファバのような特別な人間じゃないし…という一般市民に共感してしまう。だからその中で自分のできることを見つけて努力するグリンダはひときわ輝いて見えるんだなあ。

でも大多数がそうやって差別に目を瞑っている間に、誰にとっても危険な世界になっている。気付いた時には取り返しのつかないことになっている。ウィキッドはベトナム戦争をモチーフに書かれた作品だけど、このテーマは2020年代にもあまりにもリアルで、刺さる。エルファバになれないならせめてフィエロになりたいものだ…。やっぱり数年おきに、一生観たい作品だな。

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今回グッズのラインアップがとっても良くてあれこれ買ってしまった。ロルバーンとサラサ嬉しすぎる〜あらゆる演目で出してほしいが絶対に買いすぎて困っちゃうな…!