期待したものとは違ったけれど…映画「バービー」感想

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映画「バービー」日本公開3日後くらいに見てきたのにバタバタしていて感想が書けていなかった。SNSでだいぶ吐き出してしまったのですが、自分の備忘録にブログにも残しておく。普通にネタバレあります。

ずっと前から全身ピンクで見にいくぞ♡と楽しみにしていたのにプロモーション側の完全にアウトな炎上を知って気を削がれてしまい、いやでも公開直後に予定も空けてたし…行くだけ行こう…と久しぶりに映画館で見ました。結果、見て良かった!見た後に毎日観賞後の友達を見つけては語っているし、サントラもずっと流してる。ただ、私が勝手に期待していたものとは違う作品だったな〜という感じです。

ターゲットがよくわからない

一番率直な感想がこれ。皮肉たっぷりの風刺ブラックジョークは「あるある」のオンパレードで笑えるものの、フェミニズムに少しでも通じる人間からすると何も目新しいことがない。かといって家父長制に浸かった人を啓蒙するにはいろんなところが分かりにくい。バービーという女児向け人形の実写化、そして世界中で繰り広げられているプロモーションから勝手にティーン含む女の子がエンパワメントされるガールクラッシュムービーなのかなーと思っていたので、蓋を開けてみるとかつて玩具で遊んでいた3-40代以上の知識層が皮肉を理解した上で楽しむ映画という感じで、あれっ?と肩透かしを食らった気分になったのだった。

答えはないとわかっているものの

見終わった後、「え、じゃあこの地獄のような現実世界にいる女の子たちはどうしたらいいの?バービーランド/ケンダムに残された人形たちはどうしたらいいの?」と思った。いや、簡単に答えが出る問題じゃないというのはわかっている。わかっているので、ラストが「バービーがマテル社の役員になったわよ!」的な単純なオチをつけなかったことは良かったと思うのだが。

この映画の一番の盛り上がり、オチはビリー・アイリッシュのWhat Was I Made for?が流れるあの木漏れ日のシーンだと思っていて。(シンプルな歌詞と曲が良過ぎて本当にずーっと聴いてる)現実世界はピンクで埋め尽くされたバービーランドと違って綺麗じゃないこともたくさんある。でも涙が出るほど美しい。ずっとポジティブではいられない。死を考えることもある。でも生きるに足るすばらしい世界なんだ、とバービーが一歩を踏み出す。とても良いストーリーだと思う。これを他のバービーやケンに伝えるとか、バービーランドに何らかの影響があるところが見られたら嬉しかったな。そういう変化がないところも風刺なのでしょうが(ラスト、進歩したように見えてケンたちに「判事になってもいいけど最高裁はダメよ」と言ってるのとか皮肉なんだろうけどラストにあれやられるとやっぱり難しいよ)

美や多様性やポジティブさ、全てにおいて理想化された女性から"普通"の人間になる…という構造で、いやそれはTypicalバービー主人公の個人ドラマとしては良いんだけど、すでに"普通"の人間である我々女性にとって地獄である現実社会への救いはなくない?と感じてしまって。だってマテル社には相変わらずおっさんしかいないわけで。

さらにいうと、女性はかなり内省させられる作りの映画だったと思うんですよね。実際SNSで散見された女性の感想は「素直に面白かった!とは言えない、考えさせられた」みたいなものが多かった。私は正直、「なんで普段から抑圧されている女がフェミニズム映画を見てまで内省しないといけないんだ、素直にスカッとさせてくれよ」とモヤモヤしてしまって(笑)

現実の女性はこんなに不平等な世界で生きています!家父長制ってくそですよね!わかるー!あるあるー!で終わっちゃった感じなんだよね。これをまだ社会に出ていないティーンの女の子が見たら何を感じるのかなぁと思っちゃった。これから変わっていくよね!未来は明るい!という終わり方でもないし…。

ティーンの子が見たらどう思うだろう(実際私が見た回には小中学生くらいの女の子たちが結構いた)というのは、バービーランド/ケンダムの複雑な構造に対しても感じたな。特にバービーたちが男をチヤホヤしてケンダムを転覆する流れとか、ストレートに「男を手の平で転がせてこそクレバーで良い女」って感じに受け取られてしまわないか…?(あれも含めて皮肉なわけだけど、ストーリーとしてはバービーたちは洗脳が解けた状態ということになっているので…かなりの読解力が必要じゃないですか?)(そもそも洗脳どうやったのかも気になる。家父長制が一部の女性にとってメリットがあるように見える、という面も出してくれないと本当に魔法で洗脳されただけっぽい、まともに考えてる女ならああはならない!という感じにされてるのがなんかなあ。そんな単純な話でもない。)

ケンとバービーが結ばれないというのはもちろん良いのだけど、「異性愛に囚われなくていい」というメッセージ自体はなんか古いというか、今更では?バービーに選ばれなかったケンにかなり尺を割いて「あなたは添え物ではなくケンとして生きていいの」と啓蒙していたのも…やっぱり今更では?「誰かとつがいにならなくてもあなた個人に価値があります」なんてメッセージがまだ必要なの?現代。うそでしょ。私はアメリカですらこんなこと言ってるの〜〜と結構がっくりきてしまった。「女も1人でやっていけます」の次の段階にあるものを見たかったなあ。創世記パロディらしいので蛇(weiredバービー)に唆されて楽園を出るのがイヴだけ、というのがミソなのかもしれないですが。

…といろいろとモヤモヤしてしまって、個人的には素直に面白かった!楽しかった!とは言えなかったのでした。not for meとまでは言わないけど、2023年のフェミニズム映画なら、もっと良い落とし所があったんじゃないかな〜なんか惜しいな〜〜。いや手放しに好きだった方もいるだろうし、私が勝手に違うものを期待していたというだけなのですが。好きなところもたくさんあったよ!!

好きだったところ、ふふっとなったところ

・音楽と美術と衣装とキャストは完璧に良かった!!!バービーランドの色彩が可愛すぎる。女児の夢。

・マーゴット・ロビー美しすぎリアルバービーすぎ。踵の形まで美しい。

・ライアン・ゴズリング存在するだけで面白い。キャスティングが神。

・バービーの世界は女性は全員バービーである。足の形がヒールに適合しているという設定が天才で勝利している。

・サントラが本当〜に良い。ずっと聴いている。

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・バービーの世界に母親はいない。バービーにもケンにも性器がない。バービーは総理大臣にも宇宙飛行士にもなれるが母親にはならない。バービーは赤ちゃん人形のカウンターとして生まれた、女の子たちにとって「憧れの女性」だから。この「自己を持った職業婦人」と「子どもを育てるだけの母親」の二項対立が、ラスト「婦人科に行く=女性器ができた」バービーで昇華されているのはめちゃくちゃ良かった。(だからこそバービーランドにもその啓蒙があったら良かったのになーと思う。洗脳が解けた総理大臣が「私は総理大臣なのにケンにステーキ切ってた!」と言ってたけど、別にそこは両立してもいいのでは?という。)

・ケンダム状態の時の風刺セリフがすき。「私がノーベル文学賞を?きっとケンのおかげね!」(あるある)「Photoshopがわからないの〜」(フォトショという絶妙すぎるチョイス)

・男同士の戦争描写の滑稽さ(ダンス笑うしかない)

・CEOを降りる気はないが〜とか自分も母の息子だ〜とかいうマテル社のおっさんたちのリアルさ。いやでも強制的にでも1人くらい女性役員を入れるべきだろ。全体的にマテル社や創業者のネタが多く散りばめられていて鑑賞後にwikiを読み漁ってしまった。知見があるとより面白いだろうな。

・鬱バービーって実際にいるのかな??ボディポジティブだけどネガティブなバービーっていなさそうなので、死を考えるバービーは斬新。

・人間の母親の怒りの演説がわかりやすいがストレートに響いた。あの役を演じているのがアグリー・ベティのアメリカ・フェレーラなのが良かった。いろんな要素を1人の女、1人のバービーが全て兼ね備えるのは無理だよねっていう。

・「マーゴットが言っても説得力がない」って天の声ツッコミ入るのよかったw

 

…といろいろ言ったんですが、映画見た後にこんなに見た人と話したい!と思ってLINEしまくったりSNSで吐き出したりしたのが久しぶりで、そういう意味で楽しい映画体験ではありました。何度も見たいオールマイベスト!って感じではなかったけど(繰り返すけどサントラはものすごく良くてリピートしている)見て良かったです!