美しさに基準はない ミュージカル ヘアスプレー

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豪華キャストで話題になったもののコロナで全日程中止になってしまった幻のミュージカル「ヘアスプレー」が2年の時を経て上演してくれた!ので興奮の感想です。長いです。

もうね〜〜めちゃくちゃ良かった!!こういうミュージカルを観たかった!!!!曲と振り付けと衣装が最高で、終始明るく楽しいコメディだけど深いテーマが必要なところで響く脚本で、キャストが見事に全員当たり役!!久々に日本版がオールマイベストに入る作品に出会えました。(ちなみに前回そう思ったのはキンキーブーツです)訳詞も英語の残し方がかなり自然で好きだった!

声が出せなくても客席の叫び声が幻聴で聞こえるというか、拍手から興奮が伝わってきて一体感を感じる舞台も久々だった。もう幕が開いてすぐグッドモーニングボルチモアから泣いていたわよ…。見ていると多幸感でいっぱいになって。本当に幕が開いて良かったよーー。

映画版を見た時から思っていたけど、人種、体型など「差別」を真っ向からテーマにしながら、その伝え方が本当に上手くて唸る。「だって一緒に踊れないなんて馬鹿みたいだと思って」に集約されているのだよね。差別をなくすべき理由なんてこれだけでいいんだ、というのが見ているだけで伝わってくる。だってみんなで踊っている時が一番楽しいから!

ヘアスプレーは60年代の話だけど、ヴェルマの言葉「美しさには基準がある」は全然まだまだ現代社会でも消えていない概念なので、他人から見た自分の外見を一度でも気にしたことがある人(きっとほぼ全員でしょう)には刺さりまくってしまうのだよなあ。

そしてメイベルの「あなたは変えようとして一度失敗した。でも馬鹿みたいだって思うことはやめちゃいけない。」「変えたいと思ったのはあなたが最初じゃないしそして最後の1人でもない。私は戦いの列に何度でも加わるわ。」という台詞はこの世に存在する全ての差別撤廃運動に当てはまる言葉でグッときた。本当にそうだね。やっても無駄だと諦めた時点で終わってしまう。先人達の血の努力の積み重ねで手に入れた今に胡座をかいてはいけない、戦い続けないと。

キャストについて

発表時からピッタリすぎる!!と話題になっていたキャスト。全員がバチッとはまっていたなあ。特に好き!!!となったキャスティングについて。

トレイシー/渡辺直美

やはり大成功の大きな理由は直美さんのトレイシー。素晴らしかった!扮装写真は期待通りなもののミュージカル初挑戦だし肉声で歌っているイメージがなかったので正直主役を張れるのか?と不安もあったんですが、完全に仕上げてきていて歌も声量もダンスも周りに見劣りしないレベル。ていうか前回上演前に音楽番組でYou can't stop the beatを披露した時より格段に上手くなってる!!きっとめちゃくちゃ努力されたんだろうなあ。

もっとギャグっぽいトレイシーになるかなと想像していたのだけど全然そんなことはなく、トレイシーが抑えることでその分他の人のコメディ要素が活きていた。コミカルなシーンは絶妙な間でしっかり笑いを取りつつ、すごく真摯にトレイシーを演じられているのが伝わってきて感動した。「ウェイトレス」のおばたのお兄さんといい、お笑い芸人さんのミュージカル進出応援したくなるわあ…。私が見た回ではすごいシリアスな場面で噛んで笑いが起きたのに「みんなに伝わっていないかもしれないからもう一度言うけど…」と引き戻すアドリブ入れていてさすが本番に強い!と思いました。

トレイシー役:渡辺直美が発表されてずっとぴったり!と言われ続けているけど、彼女がビッグサイズの女性だからというのは理由のひとつに過ぎなくて、あのどこにいても目を引くスターオーラ、軸のあるおしゃれさ、そして何よりも周りにまで伝染するような明るい自己肯定感がまさしくトレイシーなんだなあ、と感じる。年頃の女子らしいコンプレックスはありつつも自分のスタイルを貫き、できると信じて真っ直ぐに夢を追いかけられるの、素晴らしい才能だよね。本当に魅力的なトレイシーだった。

ペニー/清水くるみ

かわいい!かわいい!かわいい!!オセロのお姫様!!ペニーのキャラクター作りとラストの大変身で完全に大好きになってしまった。独特のペニー歩きすごい。いやしかし変身後の手足の長いお人形さんぶりに「そうだジュリエットだった」と思い出したわ…ちょー可愛かった。くるみちゃんもっと見たい。

アンバー/田村芽実

かわいい!かわいすぎる!テレビの前のポージングがアイドル!笑えないレベルで性格が最悪だけどお母さんがアレだしこの時代の倫理観でブロンド美少女に生まれていたらまあそうなるだろう、、めいめいさんパンフ見るとかなり頭から役作りするタイプみたいで意外だった。

トレイシー、ペニー、アンバーの3人娘のSNS発信が可愛すぎて保存が止まらんです。ほんとかわいい。「もう子供じゃない♪」が好きすぎてあの曲ずっと見ていたいよー。映画版に無いのも惜しい。

リンク/三浦宏規

リ、リンクそのまんまだったー!キメッキメなのが面白い。アホなんだけど素直でいい奴。トレイシーに出会えて良かったね。初・三浦さんだったけどダンス歌演技全部良かった!元跡部様なんだね!テニスしてた頃が気になる。

シーウィード/平間壮一

シリアスなシーンでも隅っこでペニーの腰に手を回してガンガン口説いていて目が離せない。あんな口説き方されたら落ちちゃうよ。歌詞が一番聞き取りにくかったのが残念でしたが(シーウィードソロは結構テーマ的に重要なので)ダンスがさすがキレッキレだったし熱い気持ちを持ちながら肩の力抜けてる感じが高校生には見えないよね〜。そりゃ落ちちゃうよ。(二回目)

エドナ/山口祐一郎
ウィルバー/石川禅
ヴェルマ/瀬奈じゅん

いやーーー本当にこの大人組をキャスティングした方に金一封お送りしたい。すごい。この並び、エリザベートじゃん。トートとフランツとシシィじゃん。どうしてこうなった。キャスティングされた当人たちが一番思っていそうですが。

祐様のエドナがまーーー良くって!こんなにコメディ上手な方だったっけ。思い返すとそうだった気もする。内気で引きこもりだけど娘思いのお母さん、とびきりキュートで夫の前ではなぜかセクシーにすら見える。(本当になぜ?)映画のトラボルタエドナほど卑屈ではなくて根は結構明るいエドナ、「私なんて…」とうじうじしているように見えて「ママ最高!」と言われると「そうかしら〜!」と前向きになってくれるのが可愛らしい。ほんと可愛かった。

私は四季時代はリアルで観ていないもののエリザベート初演くらいからは祐様を見ていて、好きだったからこそ最近残念に思っていたこともあるんですが(特に高音のブレ、仁王立ちで棒読みの台詞回しで役もワンパターン化しているように感じる、など…)今回のエドナは全てが良い方向に作用しているように感じた。いや本当に祐様の役で一番好きかもエドナ。

禅さんのウィルバーは包容力とコミカルさが素敵!理想のパパ!ブリリアの音響でも1人だけ別のマイクつけてる?と思うほどクリアに聴こえてさすがです。ただのお調子者ではなくて信念と愛があって、ジョークグッズに生きてるのもきっと何か経緯があるんだろうなあ…みたいな背景を想像させてくるのが禅さんの演技力よ。

アサコさんは清々しいほどの悪役!本人が楽しんで演じていらっしゃるのが伝わってくる(笑)大真面目な顔で「ミス・ボルティモア・蟹〜🦀」のポーズをキメられる度にじわじわくる。今回女性最年長キャストらしいのですが(驚きだし、他の高齢女性を演じていらした方々が年下だということもびっくりだよ!)特に若者の多いテレビ局シーンをビシッと締める要になっていたな。大人としてどうなのよ、という言動ばかりだけどあの時代に女性があそこまでのし上がるのは並大抵のことではないのでしょう…。アンバーのパパいないのかも?って感じの台詞もあったし。パンフではcrabは”身体を使ってのしあがった”みたいな意味がある、という話が出てきていた。

ていうかパンフレットの大人組の対談めちゃ読み応えがあるので買った方が良いです。ちょうど知りたかった解釈や「彼らは第二次世界大戦も経験してるし、一層トレイシーが可愛いよね」みたいな言葉にハッとしたり、祐様のリアル60年代の話とかもっと掘り下げて聞きたい話だらけだった!

あれだけバリバリ踊る若者たちの中にいて明確に「この人の番組だ」ってわかるスター性とキレキレダンスの上口コーニーもすごく良かった。正義感はありつつ自分の立ち位置も守りながら動く大人な感じが出てた。エリアンナさんのメイベルも想像通りの歌のパワー。最近メリポピでも拝見したけど今回の方がパッションを感じて好きな役だなー。ダイナマイツの3人もすごくソウル溢れる歌声で出てくる度にうっとりした。今後の出演作もチェックしたい。ペニーママの可知寛子さんの七変化ぶりも楽しかった。

映画版との違いなど

ヘアスプレーは映画版しか見たことがなかったので、今回初めて「こういうところが変更されていたのか」と逆に確認できた感じ。見ながら特に気になったところメモ。

・ヴェルマの誘惑シーン(映画)は蛇足に感じる。
・Without loveが映画で不自然に見えたのは舞台だと牢獄シーンだからか、納得。ここの訳詞が「愛とは」と反対の表現になっているのなるほどだった。
・デマ以降は全体的に舞台の構成が良くて映像化に無理を感じたのでBig Doll houseまるっと削ってそもそもトレイシーが逃走していることにしたのは良い改変だと思う。
・ラスト奇襲ではなく「正面のドアから入る」ことに意味がある。スプレー缶で突撃〜機動隊とぶつかるみたいなのは映画用の盛り上げシーンだね。
・舞台は明るく終わるのが正解だと思うものの、ヴェルマが黒人向け化粧品会社の副社長になる、は罰になってないよねえ。アンバーは子どもだからいいけどヴェルマはしっかり罰してほしいな。
・逆にミスヘアスプレーをリトル・アイネスが受賞するのは映画版ならではの良い変更だなーと思う。ストーリー的にはトレイシーが受賞する舞台版の方が収まりが良いけど、映像だと黒人が受賞するということでテーマが光るかな。
・ペニーママの和解シーンがちゃんとあるのが良い。パパ失踪されている設定は舞台もさらっと入っているけど映画ほど意識がいかない。
・「Mama I'm a big girl now(もう子どもじゃない)」好きすぎて映画版でカットされているのが遺憾でならぬ…。

映画版もかなり好きで何回も見ているんですがネトフリの配信終了してしまったのでブルーレイ買おうかな…。

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はあーーとにかく楽しかった。2回も観られて幸せだった。本当に良かったので好きなところ語り尽くせない。永遠に続いてほしいよ!!絶対に再演してくれると信じている!!次は帝劇でお願いします!!(ブリリアだけはもうやめてくれ!!ほんとに!!!)