豪華絢爛 ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル

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日本初演の「ムーラン・ルージュ!」を観劇したので感想です。

先に言っておくと、私はこの舞台の原作となった映画版「ムーラン・ルージュ」はかなりnot for meだ、と感じた人間でして。今回観劇前に見直してやっぱり好きじゃないなあ…舞台は楽しめるかなあと不安を感じていたんですが、舞台版は映画版の300倍くらい好きでした!!

とにかくゴージャスなショーの世界

帝劇史上最高額ではと思われるチケット代でも話題になった本作品。事前に本国の映像や公式SNSでセットがすごいと見ていたものの、実物を見るといやはや、圧巻!!!

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劇場に入った瞬間からムーラン・ルージュの世界。帝劇サイズでこれをされると本当に迫力がすごい。開演前のプレショーや幕間も含めて、世界観に没入した3時間でした。圧倒的なセット、照明、煌びやかな衣装、歌とダンス。随所に「お金かかってるなあ」と実感したし(毎公演あんなに紙吹雪飛ばしてるの?笑)それに加えてヒット曲の著作権を考えると高い高いと感じていたチケット代は妥当だなと思いました。普段からミュージカル観劇は多かれ少なかれ非日常を味わうことが目的となっているけど、ここまでの別世界に飛ばしてもらえることはなかなかない。

ファンクラブで申し込んだら前から2列目の上手端っこで像の真下だった。なんらかの事故で像が落ちてきたら死ぬな…とドキドキした(笑)プレショーで踊り子の皆さんたちからたくさん視線もらって楽しい席でした。

ストーリーは全然好きじゃないけど

映画版の時点でわかっていたけど、やっぱり私はムーラン・ルージュ!のストーリーは全然好きではないんですよね(笑)

高級娼婦であるキャバレーのスター・サティーンと恋に落ちた若い作曲家クリスチャン。金持ちのパトロンの横槍もあって燃える恋、しかし彼女は難病で初日に命を落とす。…って、もう10000回見たことあるよという捻りのない展開。古典オペラならともかく2010年代ヒットソングを散りばめたミュージカルでなぜこんな話を…!?現代の曲を使って19世紀が舞台、なのはとっても良いんだけど、もうちょっと脚本なんとかできただろーー!

と思っていたのですが、舞台を見て「あ、これgleeだと思えばいいんだな」と理解しました。gleeは2010年代に私が大ハマりしていたミュージカルドラマ。私の洋楽知識は8割くらいgleeから得ているのだけど、ムーラン・ルージュ舞台版に出てくる曲もほぼほぼgleeに登場しているので予習したい人はgleeを見ましょう(布教)

gleeもね、毎話「この曲とこの曲をこういう文脈でマッシュアップするの!?」と興奮しながらクオリティの高い歌とダンスを楽しむドラマで、後半になる程ストーリーはあってないようなもの…って感じだったので(ちょいちょい良いエピソードもあるんだけど!)ムーラン・ルージュも「しみじみストーリーを楽しむ作品じゃなくて、圧倒的なショーエンタメを堪能する作品なんだな」と脳を切り替えていた。それくらいショーパートが良かった!

中毒性の高いマッシュアップの数々

とにかく「あのシーンをもう一回観たいぃ…」という禁断症状が出ているシーンがたくさんある。サティーン登場のダイヤモンド4曲マッシュアップ(Diamonds Are Forever×Diamonds Are a Girl's Best Friend×Material Girl×Single Ladies×Diamonds)は映画同様にキラキラのショーを楽しみつつキャバレーの価値観を表していて大好きだし、サティーンとクリスチャンが出会うShut Up And Dance×Raise Your Glass×I Wanna Dance with Somebodyは全体的に若いムードに満ちていてウキウキする。そしてやっぱり2幕冒頭のBad Romance×Tainted Love×Seven Nation Army×Toxicが!!!格好良すぎて最高。この3シーンだけでチケット代の元を取ったね…そしてこの組み合わせはどれも「あれ、gleeで見たことある気がする」と偽の記憶が生まれましたわね…。あと闇堕ちしたCrazy×Rolling in the Deepも良かったなーー。

1幕ラスト、象の中でラブソングが歌い継がれるところは曲数が多いのとワンフレーズだけ日本語歌詞で聴いてもどの曲かわからない…となってしまった。やっぱり原曲を知っているからこそマッシュアップの意図がわかって楽しい作品だと思うので、全体的に「現地で・原曲で観たい!」というのは強く感じたなあ。

しかしユーミンが訳したYour songはユーミンの曲ですか?というくらい歌詞がユーミン節でさすがだった。Bad Romanceの歌詞のはまり方も良かったな。

映画版との比較

私は舞台版自体が初見なので、映画版と比べて気付いた点・感じた点をいくつか。

・最後にフィナーレがあるだけで印象がかなり違う。やはり宝塚のフィナーレと同じで(笑)最後が華やかだと楽しい気持ちで終えられるなあ。私は映画が陰鬱なナレーション&エンディングにしている割に合間にぶっこまれるコミカルシーンにどんな顔をしたらいいかわからなかったので、舞台らしいまとめ方はしっくりきた。

・映画版でサティーンが公爵との初夜を引っ張る設定は無理あるだろと思っていたので、舞台版では普通に公爵と寝てるっぽいのはよかった。

・ムーラン・ルージュの「ファミリー」感の強さ。映画版は結核であることをサティーン本人が知らず、ジドラーは医師から余命を聞いても利益のために彼女に伝えない。対して舞台版では本人が余命を伝え、ジドラーたちは舞台を降りて入院してくれ、と言うが彼女が自分の意思で舞台に立つ。サティーンは彼らを「唯一の家族」と呼び、ジドラーと踊り子たちの間にも信頼関係が伺える。

・余命がわかっていたならサティーンの残り少ない人生への葛藤シーンがあっても良いのでは?と思うけどFireworkがそれなんだろうな。でもやっぱりずっと咳き込んでいたからといっていきなり「結核?」「そう、余命数週間」はおいおい…ってなりませんかね!?

・しかし本人が薄々余命が短いということを知っていたなら、自分を犠牲にしてでもパトロンをゲットして仲間を救いたい&(何もわかってないけど情熱だけはある)若い男と恋したい、も死ぬ前のボーナスタイムということで理解できる…かな…。やっぱりクリスチャンって夢しかないボンボンで、愛してる愛してる言うけど顔以外のどこが好きなんだという感じだし(ロートレックやジドラーの方がよほどサティーンを理解して愛してるよね!?)実際ずっと蚊帳の外だし思いこみ激しいし、サティーンが病気じゃなかったら長続きしていないだろという感じだけど、死の間際に自分の過去を何も知らない若いイケメンに全力で愛されるというのは女冥利に尽きるよね、うん。

・サティーンが最後に公爵に「家はいらない、私は誰のものにもならない」とはっきり宣言しているのも舞台のみ。これも死ぬのがわかっているからだなと理解できるのだけど、映画のように興行が成功した描写はないのでその後のムーラン・ルージュは無事だったのだろうか…とちょっと心配になる(笑)

・アブサンを舞台の初日前夜に飲むなww映画版の「初めてムーラン・ルージュに行く前にアブサンを飲んで緊張をほぐす」流れの方が自然では?と思うけど、前後不明なままロクサーヌ…!に雪崩れ込む演出は良い。

・サティーンに嘘をつかれて絶望したクリスチャンの迷走ぶりが映画の方がじっくり描かれている(舞台裏でもつれあったりというシーンがない)ので、いきなり劇中劇のラストシーンにクリスチャンが登場するのが唐突に感じた。「クリスチャンがいない!お前代役できるな?」とか言ってたのに普通にすっとクリスチャンが出てきたし…。サティーンも驚いてないし。映画のように「お前に返す金だ!」はやってほしかったな〜。(札束を投げつけられる望海さんが見たい気持ちもとてもあります)(宝塚では投げつける側だったからね!)

・舞台版はムーラン・ルージュの外(セレブリティのシーン)を入れていたのも意外だった。映画版の方が閉塞感のある作りで、パリの街の様子や貴族側の世界は出てこないのだよね。

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キャストについて

今回見たキャストはこちら。

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はい。話が好みじゃないのはわかっているムーラン・ルージュを見たかった理由の90%はキャスト!!!大大大好きなN2Nで倒錯した親子役だった望海さんと甲斐くんが年の差カップル!!!!これは絶対に見なければならぬ!!!!!

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ということでこのペアを主軸に決めたわけですが、やっぱりとっても良かった…。

愛と夢にキラキラ輝くクリスチャン、わんこのように熱心に口説くクリスチャン、サティーンの嘘をあっさり信じて闇堕ちするクリスチャン。甲斐くんめちゃくちゃ良かったなーー。ちょっと影のある表情や歌い方が好きなんですが、不幸になればなるほど絶望に輝く望海さんとの相性が良すぎる。Rolling in the deepでどんどん闇に転がってく感じ、いいわあ。

望海さんはソロコンサートで衣装に恥ずかしがっていたのは何だったのですか?というくらいのセクシーさでしたが(笑)

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個人的には複雑な気持ちになることはなく、女優さんとしても大好きなんだなと実感しました。歌もダンスも素敵だし、そして死に際の演技が安定の素晴らしさでした。ストーリーにおいおい…と思っていても、望海さんの死に際には無条件に泣かされてしまうのよね。。

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ただ望海さんのサティーンは綺麗すぎるというか、クリーンすぎるのがちょっと違和感あったな。不幸な生い立ちでも努力してトップスターになって、ファミリーを守るために身を削って、若い恋人を思って嘘をついて、最後は病気で死ぬ。って設定自体がそうではあるんだけど、私は娼婦を聖女として描く作品に萎えてしまいがちなので…。もうちょっと身勝手で、こりゃ若者が身を滅ぼすわ〜と思うようなファムファタールでいてほしかったかな。あと象の部屋での会話劇はもっと下品に振り切らないと面白さが伝わらないなと思った。

橋本さとしさんのジドラーが想像以上に良かったです。狸親父なんだけど、キュートでコミカルで人情味もあって。ビジュアルもイケおじすぎた。ショーを盛り上げる時の存在感と「サティーン…口紅もうすこし」というセリフの切なさ。さとしさん久しぶりに見たけどこういう役ぴったりだなあ。

あとはニニ役の加賀楓さん。とにかくダンスが格好良い人がいるなあ、セリフ回しがちょっと幼いから若いダンサーさんなのかなと思ったら元ハロプロらしくてびっくり。堂々としていて華があるし、あの衣装も着こなしていてすごい。日本のアイドル出身のミュージカル女優は蓮っ葉な役ができない人が多いので強いなと思う。

あとベイビードールの大音さんがずーっと可愛かった!カーテンコールのお辞儀の仕方がツボでした。

 

一度観たら満足だな…と思っていたけど、井上芳雄がこのクリスチャンをどう演じるのかが気になって気になってどうにか観たくなっています(笑)最近ひねくれたおじさんの役を続けて見ていたので元祖ミュージカルプリンスのキラキラ浴びたいよー!あと彼方の嫌味な貴族(これも何度も見ている気がするが)も気になるよー!