どんなラストを見せてくれるのかずっと楽しみだった大奥の最終巻が発売された。はああ、最後まで期待を裏切らない稀代の大傑作だった…。最終巻に向けて今月は1巻から読み返していたのでもう大河ドラマ5本完走したような気持ち。燃え尽き症候群だよーー。ツイッターでも叫んでるけど本当に何も手につかないのでとりあえずブログでも吐き出させてくれ！！
あまりにも見事な、最後まで一分の隙もなく面白い歴史絵巻だった！！！もう同じテーマで他の人は描けないんじゃないか？と思うくらい、ジェンダーSFでやるべきことが全て詰まっている。はーー面白かった。16年前からリアルタイムで読んでいる時もずっと面白かったし、今どの巻を読み返しても面白い。歴史物として史実とのバランス感も素晴らしいし、提示されるテーマや価値観に古さを全く感じない。私は今まで「人間の業はすべて手塚治虫の火の鳥に描かれている」と唱えていたんですけどこれからは大奥もそこに並べたい。この作品をリアルタイムで読めて幸せだったわ…。
幕末に将軍と御台所がどちらも女性になったあたりで、この物語はすごいところに到達した…と感動していたのですが
よしなが大奥17巻、そっちに舵を切ってきたか〜〜と感服。徳川の血を残すために始まった大奥がついに血縁にもジェンダーにも囚われない形に帰着するとは。大奥の終わりにして2019年にこのテーマ、結論を持ってくることをよしながふみはいつから決めてたんだろう。すごい。
— 桜花 (@oukakreuz) 2019年8月28日
最終巻の畳み方が！また！西郷隆盛が慶喜を殺すべしとした理由、それを覆した交渉とここで活きてくる和宮の性別、江戸城無血開場までの流れ、最後の花見の席で表舞台から消され続けていた和宮が真の姿を見せるというカタルシス、そして1巻の御祐筆の台詞と対をなすラストの天璋院の台詞…完璧すぎない！？！？
200年の歴史を一方的に見守っていた気分の読者としては大奥が無くなるのは寂しくもあり、瀧山の言う通り「でもこれは有功の願いでもあるのかもしれない…」という気持ちにもなり。大奥はずっとここに住む男（時代によっては女）たちを鎖に繋ぐ鳥籠で、そこに愛や学問の楽しみがあろうと基本的には出口のないお話だったのに、ラストはみんながそれぞれ解き放たれて明治の世をたくましく生きているのが伝わって嬉しい。こんなに爽やかな終幕を見せて貰えるとは思ってもみなかった。
そしてそして、没日録は焚書されて真実を知っているのは我々読者のみ、歴史はすべて正史に戻された…という展開の後に津田梅子が出てくるの、もう、鳥肌が立つほど素晴らしい。あそこでもう、これまでのお話はすべて私たちの生きる現代と繋がっていると感じてしまう。ていうかこれが史実でいいよ…この歴史を経てきた日本は捨てたもんじゃない、私も頑張っていこうって思ったよ…。
大奥って「美男三千人」のキラーフレーズが強すぎて＆ドラマの印象から美男美女の絢爛豪華な恋愛ものだと思われがちだけど、むしろ個人ではどうにもならないもの（戦国の世や身分や家や業病や容姿や身体障害や能力や性別などなど）をどうやって運命として受け入れて己の物語を作るか、というドラマの方が濃密だったと思うのよね…。
そしてジェンダーの描き方も、男女逆転設定だからといって女性に寄っているわけでもなく。どうしても子が欲しくて男を買う女たち、子を亡くして気が狂う母親を描いたかと思えば退屈しのぎに我が子を殺すような母もいて、世の母を救うために奔走する男たちがいる。実母から性的に支配される息子、実父から性暴力を受ける娘。我が子を思う親の愛にも、子を暴力で支配する醜悪さにも男女差はない。女社会で働く男性板前の生きづらさも、男社会に戻った幕府で女老中が受けるセクハラも、身に覚えがありすぎる。そして時代的に性別以上に大きな身分や家、侍の矜恃という武家社会の概念があるのがまた上手く作用しているのだよなあ。
特装版の対談にもあったけど、「優秀な人間の子が優秀とは限らない」「普通なら実は良い人だった…となるべきところでもならない」のがまたフェアで良くて。キャラクターひとりひとりが本当に魅力的だった。（特装版の冊子本当に良かった〜！！！寄稿も超豪華だった！！！私は対談の吉宗＆家重親子はテレジア＆アントワネット親子をイメージしてた、というくだりに大興奮しましたわよ）
また大奥の話をするけど吉宗&家重親子はマリアテレジア&マリーアントワネット親子をイメージしているというの、ベルばら同人描いてたよしながふみだ〜！と嬉しかった。「大奥にいる男たちはみな上様に恋をしているのでございます」はオスカル様の台詞へのオマージュだろうなとずっと思っていたのよ！
— 桜花 (@oukakreuz) 2021年2月27日
大奥キャラみんな大好きだけど総選挙するなら（してほしい）私は迷いに迷って平賀源内に入れるかな〜主従セットなら綱吉＆吉保、吉宗＆久通かな〜〜でも家定＆正弘も好きだなああ。大奥内の面々なら瀧山、江島、地味に桂昌院のように欲を剥き出しにした人物たちも好きだった…。世界史選択の関西民で江戸時代以降の歴史にあまり馴染みがなかったけど（笑）大奥のおかげで将軍や老中の名前が言えるようになったし東京の古い地名や寺社仏閣にも興味を持つようになったよ…。
女と男、男と男、女と女、親と子、主君と臣下、政治と国民、農業、商売、侍、病と医療…全てが詰まった歴史絵巻だった。「最後に全てを動かすのは人と人」本当にそうですね。。は〜〜。これから一生、節目節目に読み返す作品になると思う。よしなが先生16年間ありがとうございました。
ちなみに今期間限定で既刊18巻までKindle50%ポイント還元中なのでこれから読み始めたくなった方はぜひ！！！！
