神話とアメリカン・ドリーム NTLリーマン・トリロジー

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久しぶりにNTLを観たので感想。リーマン一家が米国に移住した1844年から2008年のリーマン・ショックが起こるまでの3世代にわたる栄光と衰退を描く三人劇。

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私は就活がリーマンショックの大打撃を受けた世代なのだけど(笑)正直リーマン・ブラザーズがどういう会社なのかよく知らない。その始まりが移民の兄弟であったこと、世襲制であったこと、州知事を輩出していること、リーマンショックの時にはすでに創業家はいなかったこと、などは完全に初耳で新鮮に驚きながら観ていた。3世代に渡る叙事詩、大河ドラマであり、アメリカン・ドリームの頂点と転落の物語であり、金融史の神話のような芝居だった。

脚本も、同じフレーズが反復されていたり散文的なリズムがかなり詩劇っぽい。シェイクスピア俳優たちが演じているのでより重厚。取引所は「物がなく、概念だけで金を生み出す神殿」、「下が見えない塔」など神話的なモチーフも登場していたような。

期待通り3人の役者の演技が本当にもう素晴らしかった。全3幕3時間の舞台で、70人以上の役を3人で演じていらっしゃるのだけど。小さな子供から老人まで老若男女問わず瞬時に演じ分けられていて、可憐な女性になった時などその愛らしさに微笑んでしまうほど。3幕は親族外の人間も多く出てきて登場人物がややこしいけど、今喋っているのが誰なのかわからなくなることが全くない。本当にすごい。そして幕間の解説でも話していたけれど、1台のピアノ生演奏という音響もとてもよかった。もはや3人にピアノを加えた4人芝居といえるくらい存在感があったなあ。

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NTLでいつも楽しみな舞台美術。舞台上で回転するガラスの箱、変化していくモノクロのアメリカの景色(悪夢の時には色鮮やかになる)、オフィスの書類箱を自在に組み立てるセット、いかにもユダヤという体の衣装。今回もシンプルで最低限なのに最新、なのが面白い。

リーマン・ブラザーズは家族の血の絆と共にユダヤの教えが深いところに根付く企業であり、奇しくもリーマン・ショックが起きた時にはそのどちらもが遠く離れたところにあった。アメリカはどんどん変化していて、当たり前にその頂点で世界を転がしているように見える人も実際はその変化に振り落とされないように毎日綱渡りをしている。突然縄から落ちることもある。ずっと3人だけだった3時間の芝居のラストにアメリカ人然とした人たちがぞろぞろと出てきて、一気に「あの日のニューヨーク」という現実に引き戻す演出に鳥肌が立った。濃厚な演劇体験ができて、楽しかったです。

 

過去のNTL感想

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NTL結構見ているのに、感想2本しか書いてない…と気付いてメモ書き程度でも残しておこうと思ったのでした。スカイライトやオーディエンス、夜中犬あたりは何か書いたような気がしていたのに…。次はイヴの総てのリバイバル上映に行きたいけど、間に合うかな。いつも、もう少しだけ上映期間が延びると嬉しい…。