ミュージカル「イザボー」感想

スポンサーリンク

ミュージカル「イザボー」@ブリリアホール観劇してきました。

ブリリアの外壁に映像が出るの良いよね。

望海さんファンのわたくし、退団後初のオリジナルミュージカル主演!末満演出!甲斐くんと敵同士!ビジュアルうつくしー!!とわくわくしてました。観てみた感想は、うーーーん消化不良!です!not for meというほどではないけど惜しい!この座組みでこの完成度なのがもったいない!もうちょっと制作期間長かったらもっと良くなってたのでは…という感じ。いつものごとく誰目線だよですが感想メモです。

良かったところ

キャストは最高

本当にね〜キャストは素晴らしかった!!!私は歌唱力はミュージカルやる必須条件である派なので1人でも音を外す人がいるとそれだけで芝居に集中できねえ!!となってしまうのですが、主要キャストが皆さん歌が非常にお上手で良かった。人数が増えるほど歌の殴り合いになって耳がびりびりした(これはブリリアの音響のせいもあるが!ちょっと耳栓欲しくなった)。またそれぞれの声が個性豊かで、耳だけでも誰が話しているか分かり易いのもよかった。男性陣みんな長髪で衣装も似てたからね。

望海風斗さん演じるイザボーは何度も何度も絶望したり悪堕ちしたり開き直って高笑いしたりとファンが思う「だいもんにやってほしい役」という感じで、スラッとした衣装も大変にお似合い。

息子シャルル7世・甲斐翔真くんはいろんなタイプの曲を歌いこなし、狂言回しとして存在感があった。N2N、MR!に続いての望海さんとの並び、やはり麗しいです。

www.oukakreuz.com

www.oukakreuz.com

男性陣の中で特に良かったなーと思うのが上原理生くんのシャルル6世。正気のときの深い愛も、狂ってる間の狂レベル()の差分もわかりやすく演じていらしたな。上原くんの声好きなんだよな〜。2幕冒頭の若かりしシャルル6世が真横を通ったときはイケメンさにドキドキしました。石井一孝さんのブルゴーニュ公は舞台全体を引き締めていたし、上川くんのルイはなんか…末満作品ぽい厨二で軽薄〜な感じが良かった。

しかし本作で一番おお!!!と思ったのは大森未来衣さんです。イザボーの少女時代イザベル、ジャンヌ・ダルク、イザボーの娘の3役を演じられていたのだけど発声も歌もとっても良くて存在感あった。今後も見たい役者さんだ。

衣装とセットが美しい

イザボーは衣装替えが多くどれも麗しいし、他の方々のお衣装も素敵だった。セットはシンプルだけど城壁のようにも閉鎖的な部屋のようにも見えて、階段と盆を多用しているのがツボだった。時々鮮やかな色のある布や花の背景を使っているのも視覚的に印象に残って良かったです。

音楽も良い

普段日本のオリジナルミュージカルで一番期待度が低いのが曲だけど(すみません)耳に残るメロディが良かったな。歌詞内容と曲調が結構リンクしていてわかりやすい。

体験として楽しい

通路席に座っていたこともあって、客席降りがたくさんあったりコール&レスポンスのような形で観客を巻き込む演出が多くて楽しかった。爆音シーンの多さ、立ち位置なんかも参加型コンサートぽかった。うん、コンサートだと思ったら超楽しかった。

 

残念だったところ

尺が足りていない

イザボーの人生と百年戦争を2時間半で描くのが難しすぎるよ!!1幕なんてほとんど背景を描くだけで終わってしまっていたし。曲も良かったけど、歴史背景や状況説明の歌詞が多くて言葉を追うのが大変。せっかく歌で表現できる方が揃っているのにあまり内面を歌う曲がなくてもったいない。ミュージカルって感情が歌として溢れ出てくるものだと思うので、状況解説曲はもっと少なくていいと思う。

過剰な演出

ところどころ、クドいなーと思う演出があった。たとえば歴史を解説するためにシャルル7世とヨランドの2人が過去に戻る形で狂言回しをしているけど、のちの展開を知っている者としての「これがイザボーの運命が狂わせることになる…!」「ここで◯◯との運命が交錯する!」みたいなセリフが多すぎる。クドい。こういうのってここぞという時に言うから格好良いのであって多すぎると「はいはい…」となってしまう。定期的に「王として過去を見つめにきたんでしょ、ここに適応しなさい」と部外者だよアピールされるのも現実に引き戻されて逆効果だったように思う。観客も毎回「なんでここにシャルル7世がいるんだっけ」とか思わないから!あと歴史が動いた時に「もちろんイザボーが全てを決めたわけではないが、イザボーの言葉が影響を与えた可能性もある」みたいな煮え切らない言い方をしているのもダサい。イザボーが歴史を動かしました!と言い切らないように気をつけているのだろうけど、ちゃんとわかってるから説明してくれなくてもいいよー。黒死病なりきりも寒かったな…。

また場面場面で見るとすごく格好良くて、よしこれがラストシーンだな?と思うような、視覚的にも曲としてもバッチリ決まっているシーンがいくつもあるんだけど、そのあと普通ーに芝居が続いてしまうのでガクッとくる。全体的に緩急がないためひとつひとつが印象に残らない。イザボーが絶望する→絶唱する、ぐるぐる回る盆セットの中で民衆が走りながら歌う、主要キャストが横一列になって絶唱する、といったシーンが多くて印象が混ざる…。アンサンブルの方まで全員がとてもお上手なのに、張り上げて歌うシーンが多すぎてずっとバタバタ動いているのでうるさく感じる。すごくもったいない。

テーマがわかりにくい

「悪女と呼ばれたイザボーは本当はどんな女性だったのか」をシャルル7世の目を通して見ていく伝記ミュージカルなんだけど、作品として彼女をどういう人物として見せたいのかがいまいちよくわからなかった。それを観客に考えてねという芝居なのかもしれないが…そのわりにはあまりキャラクターに深みがないような。純粋に夫への愛に生きていた少女〜冒頭→夫の発狂により絶望→夫を支えるために強くなるわ!まではわかるのだが、それ以降は戦略的に男を渡り歩いているようで愛人がいっぱいいるようだし、子どもを愛していると言ったり駒にしても平気な顔をしていたり、なんかこう、もうちょっと欲のままに生きる悪女or本当は夫と子どものために動いてるんですのどちらかに振り切ってくれるとメリハリがつくのにな。

で、よくわからないといえば後半になってかなり重要な役だったとわかるヨランド。最初はシャルル7世の付き人みたいな感じで出てくるけど、むしろヨランドをもっと立たせた方が良くない??2幕のイザボー&ヴァレンチーナのシスターフッドやヨランドとの二項対立が面白くなりそうポイントだったのでここもっと深掘りしてくれたらいいのに〜!と思いました。つーかヨランドとイザボーをW主役くらいにして「二人の王女」的な作品にしてくれたらめっちゃ面白かったと思うんですけど…シャルル7世から見たら実母と義母だし…いや脚本ができる前から座組みとして望海VS甲斐ありきのカンパニーだったのだろうと思いますが。。

あとさあとさジャンヌ・ダルクも、一幕で出てきた時はめっちゃ良い!と思ったんですよ。イザボーの少女時代・白い衣装だったイザベルがジャンヌ・ダルクとして出てきた=イザボーの中にある「フランスを救いたい」「息子への愛」が具現化したのがジャンヌ、みたいな解釈なのかなって。「フランスは一人の女によって滅ぼされ一人の少女によって救われた」が赤のイザボー/白のジャンヌで視覚的にもしっかり対比になっていて、ジャンヌの顔が見えないような照明演出になっているのも意味深だし、ジャンヌの名前を敢えて言ってないのも示唆的ですごい良かった。のに、2幕では普通に名乗るし、シャルル7世とジャンヌの会話もあるし、歌うし、実存のジャンヌ役として登場していて、1幕の暗示っぽい演出が全部ぼやけてしまった…。そしてそれだけ説明過多な登場をしておきながらヨランドが意味ありげに「それはまた別のお話」と勿体つけるのも、いやジャンヌの話って百年戦争の中で一番みんな知ってるパートだから!!と萎えてしまう…。

 

ということで全体的に場面のつぎはぎ感が目立ち、尺に合わせて不要なシーン増やしてません…?と感じてしまう脚本でした。モチーフと役者は良いし、もうちょっと制作期間を長くしてブラッシュアップしてくれたらすっきりまとまったのでは〜とか、いっそイザボーではなくイザボーをモデルにしたファンタジー世界の架空の悪女の話にしたら自由度高く面白くなったのでは…と思いつつ、結構配役ありきっぽい企画なので難しいんだろうな。。

良い部分いっぱいあるし、駄作!!とは思わないけど、日本発のオリジナルミュージカルとして海外進出とかするレベルの完成度ではないように思う。末満さんはヴェラキッカがすごく良かったので、こういう感じを期待してしまった…!

www.oukakreuz.com