スリルミー2021 福士×成河ペア(配信)

スポンサーリンク

予想しない形で終わってしまった2021年のスリルミー。公演が休止になったのに伴い初のオンライン配信がありました。運良く劇場で観られたにろまりペア千秋楽の感想はこちら。

www.oukakreuz.com

今回3ペア1回ずつアーカイブなしのオンライン配信ということで、正直かなり複雑な思いもあったのですが(やっぱりスリルミーは密室で幕間なし100分で観てこその演目だと思うので…)それでもやはり色々な無理を押してこの配信を実現してくださったホリプロさんには感謝です。チケットを持っていたのに観られなくなってしまった方、気になっていたけど機会のなかった方々がこの作品と出会えることになって良かった。(いやでもスリルを初めて観る経験ができるのは一度きりなので絶対劇場で観てほしい気持ちもめっちゃあるのですが…うん…複雑…!)ということで私は悩みに悩んで福士×成河ペアを観ました。未見の新ペアも買いたかったんですがスリルを間1時間で2回観るのはきついので、自分の中で進化が気になっていたそんふくペアを。そしてスリルだけは全てを遮断して見たくて、自宅では無理だと思いビジホ行ってきて見ました…。笑

f:id:oukakreuz:20210530215112j:plain

今年の各ペアの煽り文、にろまりが「究極の愛。」でそんふくが「さあ、何を知りたい。」なのものすごく核心をついているなと思うね…。

カメラワークとか配信自体のことは一旦置いておいてそんふくペアの感想。ちなみに前回の初演(2018)そんふくペアの感想はこちら。基本的にここからの変化が主に気になったところ。

www.oukakreuz.com

 

圧倒的にそんは私がイニシアチブをとっている、「私」視点の物語という印象は前回のまま。

そんは私相変わらず怖い。モンスター。でもモンスターレベルは初演時よりは下がっていて、全体的に良い意味で肩の力が抜けた演技が増えたなと思う。(血の契約「インディアンじゃあるまいし」なんてこちらが笑ってしまうくらいコミカルだし、あの夜のことで1人で語る「…思い出せない!」も本当に混乱した叫びではなく「(ここはなんて言えって言われてたっけーあーそうだった)思い出せなーい」って感じでわざとらしい。)前回は少なくとも前半は彼に平伏しているように見えたけど、それなりに軽口を叩いたりできる関係だったのだなと感じられる。あと彼のことを馬鹿にしている?下に見ていることがあからさまにわかる箇所がいくつかあるのが新鮮だった。血の契約「前にもやったことがある」に対しての「誰と?」という動揺が消えて「え、友達いないよね?」みたいな反応だったり、「俺がなりたかったのはまさに彼のような弁護士だ」に対する(ΦωΦ)「へーそーだったんだーしらなかったー」という棒読み返事だったり。最後のネタばらしが無くとも、彼より私の方が優秀なのだろうな、という感じがする。(たしかこれは史実でもそうだったような…)前回はひたすらサイコパス!化け物!と思っていたけど今回はもうちょっと人間に近づいてきたような…。一言のセリフの中で一気に歳をとる声色の演技は相変わらずぞぞぞと鳥肌が立ったな。(森の「信じてた…」がやはり圧巻)

福士彼からはそんは私へのコンプレックスが強く感じられる。今年は新納彼を見て父親・弟への屈折した感情が彼の人間味を作っていてまり私に救済を求めていると思ったけど、福士彼は弟への感情は厨二病のそれで、結構そんは私に負けたくない、弱みを見せたくない気持ちが見え隠れしていたと思う。相変わらず器が小さくて、ギザギザハートで、友達いなさそう…。(まあここも私目線の物語なので事実とのズレはありそうですが)福士彼はとにかく後半の乱れっぷり、見苦しさが良いよね。福士彼が命乞いをするほどどんどん目の奥が冷めていくそんは私。

今回他のペアも含めて初めて感じたのは「この100分では語られてないけど見えないところで何かありました」感が強いなと。彼が変わってしまった夏、彼の弟へのコンプレックス、刑務所で彼が死んだ時のこと。きっと何かがあったのだろうけど私はここでそれは語らない。初演時の感想で「そんは私が福士彼のどこが好きだったのかわからない。身体か…?」とか言ってたのだけど、今回は私の好きだった頃の彼はラストの写真の中の彼なんだ、とわかった。変わってしまう前の彼。公園でレイと呼びかけてくれたときの彼。あの彼を取り戻すために、永遠に自分のものにするために、そんは私は何度でも同じことを繰り返すんだろう。でもこの芝居が始まった瞬間から彼はすでに変わってしまった彼なんだよなあ。

にろまりの「違う選択肢を選んでいれば悲劇が起きなかっただろう2人」を観た後なので余計に「そんふくはどういうルートを辿ってもそんは私の望む方向に連れて行かれるんだろうな」と感じたし、同時にどういうルートを辿ってもそんは私が福士彼を手に入れることはできないんだなとも感じた。彼が刑務所で先に死ぬことで私から逃げ切ったとも捉えられるし、うーん、なんというか、「愛の物語」に昇華してしまわないように後味の悪さを残しているんじゃないか、と思う。成河さんはインタビューなどでも「この時代にこの作品を上演する意義」みたいなことを語っていらっしゃるし。敢えて厨二病のイタさ、愚かさを出して事件そのもののエンタメ化を避けようとしているのでは…と思う。すごく頭で考えて緻密な演技をされる方なので。

 

…あとこれは余談で自分の中の発見なんだけど、福士さんの演技は普通に好きだけどどうにも彼としての説得力に欠ける…と思っていた理由がわかった。自分が初めて観たのが柿澤×松下ペアだったから、私は彼に対してどこかで「圧倒的に敵わない」と思っていて欲しい。そしてそのカリスマ性は歌唱力に表れてるのがベスト、という個人的な好みがあるのだと気付いた…。完全に刷り込みだわ。。

しかしそんふくは他ペアにはない経歴の2人であることがかなり効いていて、ミュージカルよりストレートプレイ寄りで楽しめるのが面白いですね。個人的にはデュエットでがんがん聴かせて欲しいので、福士さんもう少しお歌頑張って〜!という気持ちはどうしてもある。できれば続投して今後の進化も見たいペアです。あとそんは彼×そんは私を観てみたいな(無理)