理想的な映画化 Netflix マチルダ・ザ・ミュージカル

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2022年に最も楽しみにしていた映像作品、マチルダ!!年末に公開され1ヶ月で10回以上見て、もう自分の中ではすっかり殿堂入りしてしまいとにかく語りたいテンションではなくなってしまった…失敗した。勢いで感想書くには初見から2〜3回目くらいの間が良いですね。ということで若干落ち着いてきちゃったけど超超超良かったよ〜!!!

大好きな舞台マチルダの映像化

私は元々マチルダという児童文学(とロアルド・ダール)が大好きなんですよね。マチルダはハリポタが発売するまでイギリスの児童文学売上トップを独走していたらしい。私もロンドンで暮らしていた幼少期に愛読していました。実家にはペーパーブックが揃っている。

ロアルド・ダールらしい毒っ気に満ちた、わくわくする小説です。ずっと大好きな本だったので、舞台化が発表された時もとっても嬉しくてトニー賞パフォーマンス映像を延々と見ていたし、その後BWにもWEにも観に行った。

今回のネトフリは小説の映画化ではなくこの舞台版の映像化。個人的には原作→舞台→映画の順に見るのが「ここがこうなるのか!」という面白さがあって楽しいかなーと思う。もちろん映画→舞台でも感動すると思うけど。舞台版は春に日本キャストで初上演されるので素晴らしいタイミングの公開!ネトフリありがとうありがとう。以下、舞台版ネタバレも含みます。

映画ならではの演出と美術

舞台版の映画化ということで曲と脚本が良いことはお墨付き。すでに完成度が高すぎる舞台とどう差別化するのか、あの素晴らしい舞台美術や独特の世界観をどのように映像に落とし込んでくるのかというところが一番楽しみかつ心配な部分だったけど、ばっちり期待を上回る作品になっていた。

ミュージカル舞台の映像化作品を見ていると、本来なら表現の自由度が上がるはずが逆に臨場感が失われてしまっていると感じることがよくある。舞台では胸に響くソロ歌唱シーンが映像だと間伸びして見えてしまったり。(さらにその間の場を繋ぐために風景映像や回想シーンなどが多用されて白けさせられたり)舞台より大人数を使っているはずの群舞が、空間が広すぎてスケールが小さく見えてしまったり。舞台はそこに実在しないものを役者の演技力と観客の想像力で補いながら観るものなので、映像で先に「こういうことを考えてほしい場面ですよ」と回答を見せてしまうことで想像の余白を潰している作品も多いと思う。

今回のマチルダはその点、映像の自由さをとても上手く活かしていた。たとえば舞台ならではの「学校の閉塞感」は広々とした学校のセットでは薄まってしまうのでは?と心配していたけど、色彩とカメラワークで見事に不気味な牢獄のような空間を作り上げていた。"School song"は歌詞のアルファベットが視覚的にもわかりやすい演出になっていて、こちらの方が好きかもというくらい。軍隊っぽさも加わっている。

また作中劇として語られる「曲芸師の話」のファンタジックさ、マチルダの想像とミセス・ハニーの幼少期がオーバーラップする場面などはまさに映像だからできるわかりやすさ。舞台版はファミリーミュージカルながら、ここは子どもに一発で伝わるかな?と思う部分でもあったので。

唯一残念だったのは舞台版で一、二を争う好きなシーン"When I grow up"だけど、映像でブランコに乗ってもあの開放感は出ないだろうし、潔い変更ではある。逆にラストの学校が遊園地のようになる場面は映像にしかできないスケール感のハッピーな演出だった。

ただ舞台だと記号として捉えられるものが映像だとリアルすぎる、という面もあり、例えば子どもたちに降りかかる試練はちょっと見ていてしんどくなるところもある。マチルダの親もトランチブル校長もやってることは普通に虐待なので。まあなので最後のトランチブル校長へのお仕置きは舞台版と比較すると大袈裟すぎないか?これじゃ超能力映画になっちゃわない?と懸念しつつ、映画サイズで良かったと思う。あの校長はちょっとチョークが浮くくらいじゃ怖がらなさそうだし。

色彩も美しかった!そもそもロアルド・ダールの世界観と映像は相性が良いと思うのだけど、キッチュで大袈裟で寓話的、ブラックユーモアたっぷりでド派手な色彩がすっと入ってくるのはやはり「チャーリーとチョコレート工場の秘密」の前提が大きいだろうな。全世界の映画ファンはあの世界観を見慣れているから、導入のカラフルな産婦人科のシーンからすっと作品に入りやすい。病院も家も学校も森も、色が美しかったなあ。

キャストも良かった

特にトランチブル校長!校長は少しでも人間味があると途端にただの児童虐待、犯罪者になってしまう。(いや児童虐待だし犯罪者ではあるのだが)徹底的にコミカルで可笑しく、しかし決して愛される要素はない悪役にすることで物語が成り立つわけで、恐ろしいバランス感覚が必要な役だと思う。さすがエマ・トンプソン!(「クルエラ」の徹底的なヴィランズ役も良かったですね)また舞台版では校長役を男性が演じることをトランス差別的な意味で問題視する声もあり、今回は女性が特殊メイクで演じる方針にしたのも良かったと思う。

アリーシャ・ウィアーのマチルダは舞台版マチルダそのままの利発さと真っ直ぐに親の愛を求めている子どもらしさが同居していてすんごく良かった。歌ももちろん。いやーみんなどこから見つけてきたんだろうというくらい子役たちが全員良かったね…。舞台版だと大人の役者も混じる群舞が映画ではほぼ子役だけで構成されていたのも圧巻。"Revolting Children"は全ミュージカルの中でも上位に入る大好きなシーンだけど、あそこだけでも映画館の大画面と音響で見たいよー。オルテンシア役の子が格好良すぎてスピンオフ作ってほしいくらいです。ブルース役の子も可愛かったな。子どもたちが「ママが言ってた、僕は奇跡だって!」と叫ぶのを見ると泣けてくる。子どもはみんな存在が奇跡だよ〜!!!

映画はより「大人も楽しめる」を意識?

舞台版と映画版の一番大きな違いかな、と感じたことです。最後の新曲で特に実感したけど、映画版はミス・ハニーをもう1人の主人公に据えることで大人の視聴者が作品に入り込みやすくしていた。ミス・ハニーはマチルダと同じようにかつては虐げられる少女であり、今も理不尽に耐えている大人。おかしいことにはNOと言っていい、反抗しないと世界は変わらない。ネトフリのマチルダ・ザ・ミュージカルは子どもだけでなくかつて子どもだった人たちへの応援歌でもあるのだと思う。

私は舞台版の、子どもが等身大の目線で怒り、悲しみ、楽しめるところが大好き。横で見ている大人も共感するところがあるし学びを拾うけど、マチルダはあくまで児童文学でメインは子どもに向けて作ってる作品だと感じている。(これは舞台版のメリーポピンズも近いかな、子どもが見ても大人が見ても違った視点で楽しめる)でもネトフリでの配信映画としてはこの形で良かったなと思う。映画は実際のところ大人だけで見られることも多いだろうし、綺麗に舞台版と差別化されているなあと。

個人的にはマチルダとミス・ハニーに一緒に側転してほしかった…あとブランコ…だけが未練といえば未練ですが(笑)不満はあってないようなもの。近年の映画化ミュージカル作品の中でもダントツに好きでした。ありがとうネトフリ!まだまだ継続するよネトフリ!!でもメイキング入れたブルーレイ発売してくれたら買うよ〜!!!

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サントラ毎日聴いてる!!ほんと好き。

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